加湿の効果と問題点

先日テレビで加湿器を紹介する番組がありました。
食事中に居間から聞こえてきた音声だけの内容なので詳しくは分りませんが,冬季の加湿の必要性にも言及していたと思います。

一般の聴取者のみなさんが,なるほど冬の加湿は必要なのか,という考慮を欠いた考え方に警告を与えるために,この記事を書いています。

たしかに,乾燥状態が続くと,のどや気管支は防御機能が低下するため,インフルエンザ・ウイルスによる感染が起こりやすくなります。

また,「ゴホン10万,ハクション100万」という言葉があるそうで,風邪をひくと1回の咳(せき)で10万個,1回のくしゃみで100万個のウイルスが空気中にばらまかれるといわれています。このウイルスは,乾燥状態では空気中に漂う時間が長くなりますが,湿度の高い状況では,すぐに地面に落下してしまい,感染の危険性が減るというのです。

しかし,一般の人たちはあまり気づいていないのですが,とても重大な建物側からの問題点があります。

それは「結露」の問題です。

結露といえば,窓につく水滴,ぐらいに思っている方々がいますが,窓ガラスだけで収まってくれれば,それほど大きな問題にはならないのですが,空気中の水分はいろんな場所に流れ込んで,見えないところで害を及ぼすので問題が大きいのです。

空気中や材料の内部に含まれる水分のことを「湿気(しっき,しっけ)」と呼び,液体(水)と気体(水蒸気)の両方の状態をいいます。

湿気の性質は,拡散性が高く防湿がむずかしいことです。
また,空気中に含み得る水分の量は,温度に関係し,高温では多く,低温になるにしたがって少なくなります。
ですから,低温になると,気体の状態でおれなくて,液体にもどり結露を引き起こすのです。

寒い地方では,建物内部で起こった結露のために氷結して,建物が破壊するような重大被害も起こりました。

ですから,寒冷地では壁の断熱を十分にして冷えないように,そして防湿を完全にして建材内部に水分が行かないように,という断熱防湿工法が建物を守るために一般化しました。

北海道などの寒冷地では,室内を常に暖房しておくのが常識で,学生時代,北海道から京都に出てきた学生が,京都は寒いといってパッチ(ズボン下,タイツ)を2枚重ねで着ておりました。

つまり,われわれの住む比較的温暖な地方では,必要な部屋に,必要な時間帯だけ暖房するという,部屋別暖房間欠暖房が,経済的な観点から,ふつうの住み方です。

まず,知っておいていただきたいのは,暖房している部屋では加湿しなくても,湿度はある程度高くなっているのが普通だということです。
それは厨房の調理による水蒸気の流入,風呂場からユゲの流入,観葉植物の水やり,洗濯物ほし,金魚鉢などの水槽,人間の呼気からの水分(静座50g/h)発生,床壁天井・家具からの水分の放湿などがあるからです。

また,ガス・ファンヒータや石油ファンヒータなどの燃焼型の暖房機器を使っている場合は,排気ガスの問題に加えて,多量の水分を発生します。
まさか,ストーブの上にヤカンをのせるという,前時代的な過剰加湿をする家庭は,少ないと思いますが・・・。

暖房しているとき,暖房していない部屋(非暖房室)で結露が起こることがあります。
それは,暖房室からの湿気非暖房室に流れ込み(拡散性が良いため),床壁天井が冷えているため,そこで結露が起こることがあります。
これは,暖房室に接している押入れ防湿がむずかしい)内部で結露が起こるのも同じ原理です。

間欠暖房の部屋で加湿をしたとすると,暖房を停止しているときに室内の床壁天井の温度が下がり,かならず結露が発生します。

室内表面の結露も,窓ガラス面だけなら処理は容易なのですが,家具の裏の壁に発生した結露などは見過ごされて,黴(かび)の発生につながったりします。

このように,建築技術に携わる専門技術者たちは,建物を安全・清潔に保つために種々努力を重ねて来ました。

部屋を加湿すると風邪を引きにくくするというのは,事実でしょうが,加湿することでの問題点も大きいので,よく考えてご利用ください。

暖房加湿を切るときに,部屋の窓を開けて換気すると結露の被害は減少されますが,「ガスファンヒータをご使用のみなさんは,30分に1度,窓を開けて換気してください」というガス会社のテレビ広告と同様に,実行するのがむずかしいことです。

さて,
この時期にふさわしい歌はこの曲にしましょうか。

とうだいもり勝 承夫・作詞 アメリカ民謡(1889)明治唱歌(三)旅泊

こおれる月かげ 空にさえて
ま冬のあら波 よする小島
思えよ とうだいまもる人の
とうときやさしき 愛の心

はげしき雨風 北の海に
山なすあら波 たけりくるう
その夜も とうだいまもる人の
とうとき誠よ 海をてらす

灯台守といえば,
映画『喜びも悲しみも幾年月木下恵介・監督 佐田啓二・高峰秀子・主演(1957)では,海の安全を守るため,日本各地の辺地に点在する灯台を転々としながら,厳しい駐在生活を送る灯台守夫婦の,戦前から戦後に至る25年間を描いた長編ドラマの名作でした。
映画では男声合唱でしたが,のちに若山彰の歌唱による同名の主題歌が大ヒットしました。
作曲家の木下忠司さんは監督の木下恵介さんの弟さんで,いまもご健在です。

喜びも悲しみも幾年月木下忠司・作詞作曲(1957)

おいら岬の 灯台守は
妻と二人で 沖ゆく舟の
無事を祈って 灯をかざす 灯をかざす

冬がきたぞと 海鳥鳴けば
北は雪国 吹雪の夜の
沖に霧笛が 呼び掛ける よびかける

離れ小島に 南の風が
吹けば春くる 花の香だより
遠い故郷 思い出す 思い出す

あしたに夕べに 入船出船
妻よ頑張れ 涙をぬぐえ
燃えてきらめく 夏の海 夏の海

星をかぞえて 波の音きいて
ともにすごした 幾年月の
喜び悲しみ 目にうかぶ 目にうかぶ

しかし,2006年に灯台は無人化され,国内の灯台守は消滅しました。

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