日本はいまや世界最高の長生きの国になっています。
しかし,平均寿命より健康寿命,とは最近よく聞く言葉です。
健康寿命とは「日常的・継続的な医療・介護に依存しないで,自分の心身で生命維持し,自立した生活ができる生存期間」のことです。
WHO(World Health Organization,世界保健機関)が2000年にこの概念を提唱しました。
現在の日本のデータは
平均寿命 男 81.09歳 女 87.26歳
健康寿命 72.14 74.79
・ 差 8.95 12.47
健康寿命と平均寿命の差は,男で9年,女で12年半もあります。すなわち,それだけの期間,世の中の医療や介護のお世話にならなくてなならないということで,この差はできるだけ縮めたいものです。それが,健康で長生き,という理想でしょう。
最近(2018.10.13),NHKで健康寿命に関する興味深い番組を放送していました。
日本全国の65歳以上,のべ41万人の生活習慣や行動に関するアンケートを,10年以上にわたって追跡調査を行った膨大なデータをもとに,AI(Artificial Intelligence,人工知能)に分析させました。
それによると,「健康には運動より食事より読書」という画期的な分析結果がでました。
たとえば,山梨県は健康寿命が長く,男性は全国1位,女性は3位。ところが運動やスポーツの実施率では,なんと全国最下位。にもかかわらずなぜ健康寿命が長いのでしょうか?
じつは人口に対する図書館の数がダントツの全国1位なのです。
山梨県では学校司書制度が昭和20年代から広がり,公立小学校での学校司書の配置率が98.3%と,高い普及率を誇ります。そんな環境で育った県民全体に読書の習慣が根付いたのではないか,と分析しています。
2017年に,「初等教育をしっかり受けると認知症を減らす効果がありそうだ」という論文が国際的な医学雑誌で発表されました。(Livingston, G. et al.(2017) “Dementia prevention, intervention, and care.”)
また,アメリカ・イェール大学が発表した「読書と寿命」に関する論文によると,50歳以上の約3600人を「本を読む人」と「まったく読まない人」のグループに分け12年に渡って追跡調査したところ,「本を読む人」の方が2年近く寿命が長かったというのです。しかも,性別・健康状態・財産・学歴には関係なく,本を読むことが長寿につながっていたと結論づけています。
さらに,医学や高齢者福祉などのエキスパートが集まるJAGES(日本老年学的評価研究機構)が現在調査中の研究では,「図書館が近くにある人は要介護リスクが低い」というデータもあるとしています。
千葉大学教授の近藤克則さんは,「“心が動くと体が動く”という言葉があるが,何かやってみたいことを見つけると,旅行に行こうとか,行動を起こそうとなる。読書は心を動かし,行動を起こすきっかけを与えてくれるのでは」と言います。
AIの分析では,「本や雑誌を読む人」は多くの健康要素とつながっている一方,「読まない人」は不健康要素(「人生に嫌気がさすことがある」「社会に関心がなくなってきた」など)と数多くつながっていることが判明。はっきりと差が出ました。
東京大学の坂田一郎さんは,「病院を建てたり,医療を充実させることに比べ,学校司書を増やしたり図書館を充実させる方が,コストがかからない」利点があると指摘しています。
以前見たテレビで,脳の断層写真を見ると,広範囲に委縮がみられる,いわゆるアルツハイマー病の重度の状態にあるはずの男性が,認知症テストをすると,まったく問題なしという結果で,会話をしてもまったく普通以上にに応対できていました。その人は,毎日,新聞を隅から隅まで読み,生き生きと外交的に過ごしておられました。恐らく,委縮した部分の働きを,まだ正常な部分の能細胞で,補完しているのではないか,という結論だったように記憶します。
そうすると,認知症も恐くないですよね。新聞・雑誌・本などをしっかり読書して,読みっぱなしにせずに,その話題でほかの人たちと会話すればいいだけのことですから,いたって簡単なことです。
今回の歌はアイルランド民謡『ダニー・ボーイ(Danny Boy)』にしましょう。『ロンドンデリーの歌(Londonnderry Air)』として知られている曲にイングランドの法律家のフレデリック・ウェザリー(Frederic Weatherley)が1913年に歌詞をつけました。ロジェ―・ワーグナー合唱団(米)の演奏です。
Oh Danny boy, the pipes, the pipes are calling
From glen to glen and down the mountainside
The summer’s gone and all the roses falling
‘Tis you, ‘tis you must go and I must bide.
ああ私のダニーよ バグパイプの音が呼んでいるよ
谷から谷へ 山の斜面を駆け下りるように
夏は過ぎ去り バラもみんな枯れ落ちる中
あなたは あなたは行ってしまう
But come ye back when summer’s in the meadow
Or when the valley’s hushed and white with snow
‘Tis I’ll be here in sunshine or in shadow
Oh Danny boy, Oh Danny boy, I love you so.
戻ってきて 夏の草原の中
谷が雪で静かに白く染まるときでもいい
日の光の中,日陰の中,私は居ます
ああ私のダニーよ,あなたを心から愛しています
But if ye come and all the flowers are dying
If I am dead, as dead I well may be,
You’ll come and find the place where I am lying
And kneel and say an Ave there for me.
すべての花が枯れ落ちる中,あなたが帰ってきて
もし私が既に亡くなっていても
あなたは私が眠る場所を探して
ひざまづき,お別れの言葉をかけるのです
And I shall hear, though soft, your tread above me
And all my grave shall warmer, sweeter be
For you will bend and tell me that you love me
And I shall sleep in peace until you come to me.
私の上を静かにそっと歩いても私には聞こえる
あなたが愛してるといってくれたとき
私は暖かく心地よい空気に包まれるでしょう
私は安らかに眠り続けます
あなたが私の元に来るその時まで
この歌はアイルランド本国よりも,移民でアメリカなどの外地に出た人たちの間で広まりました。故郷を思う心が,この母の思いと重なったのでしょう。
「健康には運動より食事より読書」といっても,やっぱり適度な運動と,バランスのとれた食事は,健康には欠かせません。
食事をするときに,いきなりガツガツ食べ始めないで,その料理を見つめて,少し考えてみる,「この食事はいま必要なのか」と。そうするだけで,不必要な食物摂取は控えられるそうです。
頭で食べる,と言う言葉もありますね。ちょっと考えるだけで大きく違ってきます。やっぱり人間は脳を中心に生きているのです。
これから寒さの冬に向かいますが,準備は十分ですか?
インフルエンザの予防接種は済みましたか?
抗体ができるまで一ヵ月ほどかかるので,11月中には終わっておきたいですね。
季節と気候にあった生活をするのが重要です。今から過剰に厚着をする必要はありません。少しは我慢することで鍛えられることもあります。気温変化を見て,自分に合った生活をしましょう。