英雄伝説

本来,重みのあった言葉が,最近特に安易に使われる傾向にありますね。

たとえば,カリスマ,レジェンド,シュールなど,いろいろ耳にします。

カリスマΧάρισμα; ギリシャ語,Charisma; ドイツ語):予言者・呪術師・英雄などに見られ超自然的・または常人を超える資質のことを指す。もとは,キリスト教用語として,『新約聖書』において,神からの天与の賜物の意味で用いられた言葉である

レジェンド(legend):伝説,言い伝え,または伝説上の人物

シュール(シュールレアリスムの略,surréalisme,フランス語):一般的には芸術の形態・主張の一つとして,日本語では超現実主義と訳されている

みんなが使うと,本来の意味が薄れ,ますます軽い言葉になって行きます。

携帯会社が自社のブランドauにかけて「英雄」を登場させるCMが目につきます。三太郎とか言って,桃太郎・金太郎・浦島太郎が登場しますが,浦島は決して英雄ではありませんね。

日本の伝統的な英雄として有名なのは

スサノオ(須佐之男命):イザナギとイザナミの子で,天照大神(アマテラスオオミカミ)は姉

ヤマトタケルノミコト(日本武尊):第12代景行天皇の皇子で,第14代仲哀天皇の父にあたる。熊襲(くまそ)征討・東国征討を行ったとされる日本古代史上の伝説的英雄

坂田金時:幼名は金太郎,源頼光の家来・四天王の一人

 ・牛若丸:源義経の幼名
 
弁慶:源義経の郎党の一人
 
桃太郎:お伽噺(おとぎばなし)の一つ
 

かずあるお伽噺のなかで特に不思議なものは,竹取物語,またはかぐや姫です。

あらすじは

昔,竹を取り様々な用途に使い暮らしていた翁とその妻の嫗がいた。ある日,翁が竹林にでかけると,光り輝く竹があった。不思議に思って近寄ってみると中から三寸(約 9 cm)程の可愛らしい女の子が出て来たので,自分たちの子供として育てることにした。

翁が見つけた子供はどんどん大きくなり,三ヶ月ほどで妙齢の娘になって,この世のものとは思えない程の美しさであった。 

世間の男は,その貴賤を問わず皆どうにかしてかぐや姫と結婚したいと,恋い慕い思い悩んだが,その内に,志の無い者は来なくなって,最後に残ったのは色好みといわれる五人の公達で,石作皇子(いしつくりのみこ),車持皇子(くらもちのみこ),右大臣阿倍御主人(あべのみうし),大納言大伴御行(おおとものみゆき),中納言石上麻呂(いそのかみのまろ)といった。

かぐや姫は,「深い志を知らないままに結婚できません。私の言う物を持って来ることが出来た人にお仕えいたしましょう」と言った。

その意思とは
石作皇子には「仏の御石の鉢」,
車持皇子には「蓬莱の玉の枝(根が銀,茎が金,実が真珠の木の枝)」,
右大臣阿倍御主人には「火鼠の裘(かわごろも,焼いても燃えない布)」,
大納言大伴御行には「龍の首の珠」,
中納言石上麻呂には「燕の産んだ子安貝」を持って来させるというものだった。どれも話にしか聞かない珍しい宝ばかりで,手に入れるのは困難だった。

結局,かぐや姫が出した難題をこなした者は誰一人としていなかった。そして,帝の制止もかなわず,かぐや姫は月に帰るのであった。

これは日本最初のSF(siencie fiction,空想科学小説)と言ってもいいでしょう。インドへ行ったり,中国へ行ったりでスケールも大きいです。出来そうもない難題を出すのも面白いです。

これらをかなり忠実に,そして面白おかしく,シャレた歌にしたのが,今回の曲です。

かぐや姫』作詞作曲:三木鶏郎 歌:河井坊茶(1955.9)

最初の男は インドに渡る
仏陀の石鉢 天然記念物
ぴかぴか光らず 真黒なので
よくよく見たらば メイドインジャパン
※泣く泣く かぐや姫 月の出を見て 泣きじゃくる

お次の男は 蓬莱山へ
行きと帰りで 千夜一夜
玉の小枝と 思ったら
話も土産も みんなイミテーション
※くりかえし

第三の男が 中国船に
頼んだ衣は 火ねずみ 防火服
そこで火をつけ 焼いてみたら
みるみる めらめら 灰と消えた
※くりかえし

四度目の男は 竜の玉を
探して来ようと のこのこ出かけ
のりだす荒海 台風 ハリケー
命からがら 逃げかえる
※くりかえし

最後の男は つばめをさがす
今なら さだめし 望遠レンズ
子安の貝を つかんだら
モッコの綱切れ どしんと落ちた
※くりかえし

三木鶏郎(みきトリロー)1914-94
本名は繁田裕司(ひろし),東大・経済学部卒(2浪2留),1940年,日産化学工業に入社半年で召集を受け,千葉県の教育隊の経理部に勤務,軍務のかたわら諸井三郎に作曲を師事,終戦後は復職せず,好きな音楽の道に進むことを決意。
1946年,河井坊茶らと「ミッキートリオ」を結成し,自らは三木鶏郎(みきとりお)を名のる。
1947年,NHKラジオ『日曜娯楽版』での「冗談音楽」で人気を博す。
1951年に永六輔・野坂昭如らと「トリローグループ」を結成,また神津善行・いずみたく・ジョージ川口・小野満・鈴木章治などを集めて「三木鶏郎楽団」を結成し,門下から歌手の楠トシエ・中村メイコや俳優コメディアンの逗子とんぼ・なべおさみ・左とん平などを世に送り出した。

主なヒット曲
・毒消しゃいらんかね(歌:宮城まり子)
・田舎のバス(歌:中村メイコ)
・僕は特急の機関士で(各種レコードが発売)
・鉄人28号・主題歌(歌:デューク・エイセス)

主なCMソング
・僕はアマチュアカメラマン(小西六写真)歌:灰田勝彦
・明るいナショナル(松下電器)ナショナル劇場オープニング
・ジンジン仁丹(森下仁丹)歌:ダーク・ダックス
・くしゃみ三回ルル三錠(三共)歌:伴久美子
・京阪特急(京阪電鉄)歌:楠トシエ

河井坊茶(かわいぼっちゃ)1920-71
本名は秋元喜雄,早大・理工学部卒,暁星中学で数学教師,東京空襲で被災し,復員した三木鶏郎の自宅跡に小屋を建て夫婦で居候,三木らと「ミッキートリオ」を結成し,のち「三木鶏郎グループ」となった。

歌詞に出てくる「メイド・イン・ジャパン」は当時,日本製品が「安かろう悪かろう」と言われて,粗悪品の代名詞であったのが分かります。
いまや「made in Japan」はクール・ジャパン(cool Japan,かっこいい日本)とともに,大人気です。65年の歳月は,無駄ではなかったのです。

その後,三木鶏郎の楽しい音楽を受け継ぐような作曲家は表れていません。

クレージー・キャッツの植木等(1926-2007)が歌う「スーダラ節」からの一連の歌は,ほとんど作詞・青島幸男(元・東京都知事),作曲・萩原哲昌のコンビでした。

宮川泰(ひろし,1931-2006)はクレージー・キャッツへの参加も考えたほどのコメディ志向でしたが,実際の活動はザ・ピーナッツを育てるなど,割合まじめでした。例外は「宇宙戦艦ヤマト」ぐらいでしょうか。

CMでは小林亜星(1932-)がいます。レナウンの「ワンサカ娘」は広田三枝子,シルヴィ・バルタンなどの歌で,出色の長期ヒットです。

さて,新型コロナ・ウイルスが世界中に猛威をふるっています。もはや,感染経路を推定できないほどです。
感染した人の致死率は高くないとはいえ,感染して発症するまでの時間が長く,また感染しても発症しない人でも,感染源になり得る点が,まことに厄介なことです。
免疫力の弱い高齢者の致死率がの高いので気をつけないといけません。

人が集まる催し物・行事などの自粛が呼びかけられています。

東京マラソンの一般参加が中止になりました。
参加料,日本人16,200円,外国人18,200円は戻らないそうです。常連さんに聞くと,戻らないことが普通らしいのですが,参加者38,000人分,しめて6億円余りが消えました!
運営費は20億円くらいかかるので,参加費はその一部だそうです。もし私なら,納得できません。いや,もともと参加する気など全くありませんが・・・

東京オリンピックに影響が出ないと良いのですが。
思い切って秋に順延というのが,競技者・観客にとっても良いのかもしれません。

それこそ,くれぐれも健康に留意して,生き抜かれることを期待します。

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