年の始めの

年の始めのためしとて」は,唱歌「一月一日」の歌い出しで,「ためし」は「」で,決して「試し」ではありません。
年始の先例のように」というような意味です。

元旦(元日の朝)には,お屠蘇(とそ)を飲み,それぞれのお国柄の雑煮おせち料理をたべて,新年の祝儀をおこないます。

厚い新聞が届きますが,正月の新聞は読みごたえがないですね。

ほどなくとどく年賀状は,いっとき,虚礼廃止だとか,メールで済ます,などですたれた感がありましたが,年に一度の安否確認の意味もあって,なくならずに続いています。

正月が困るのは,スポーツジムも休館だし,テニスコートも開いてないし,初詣に出かけるにも混んでいるし,TV番組も似たようなものばかりで飽きるし,身体を持て余すことです。

唯一といっていいTVの楽しみは,オーストリアのウィーンから生でとどけられる,ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の「ニュー・イヤー・コンサート」でしょうか。
現在では世界の40ヵ国以上に生中継されています。
ちなみに,オーストリアと日本の時差は8時間,日本が進んでいます。

会場はウィーン楽友教会(Wiener Musikverein,ヴィーナー・ムジークフェライン)の大ホールで,ホール内部の絢爛豪華な装飾とともに,その音響の素晴らしさから通称「黄金のホール」と呼ばれています。

演奏会は,マチネ(昼間の興行)のため,演奏者は燕尾服やタキシードではなく,フロックコートかモーニング,略式でもズボンはグレーの縞物です。

演目はおもにワルツポルカです。
このウィンナ・ワルツと呼ばれるクイック・ワルツは独特で,3拍子が均等間隔ではなく,2拍目がひっかかり気味に演奏され,ウィーン生まれでなければこのリズム感がとれない,などと言われたりしています。

この伝統あるコンサートでは,アンコールとして,ヨハン・シュトラウスⅡの「美しく青きドナウ」,そして最後にヨハン・シュトラウスⅠの「ラデツキー行進曲」を演奏するのがならわしとなっています。

美しく青きドナウ」の冒頭が演奏されると一旦拍手が起こり演奏を中断,指揮者およびウィーン・フィルからの新年のあいさつがあり,再び最初から演奏を始めるのもならわしです。

新年の挨拶はその年の指揮者により色々な趣向で行なわれます。
たとえば,2002年のコンサートではウィーン・フィルの楽員に縁のある国の言葉で新年の挨拶を述べるという形で行なわれ,日本語のあいさつはコンサート・マスターが日本語で(妻が日本人),指揮者の小澤征爾が中国語(満洲生まれ)であいさつしました。

最後の最後の「ラデツキー行進曲」では,小太鼓が高らかに打ち鳴らされると,観客はもう待ってましたとノリノリで手拍子で参加します。

指揮者が誰になるのかも,注目ですが,今年2015年はズービンメータが5回目の登場でした。

ズービン・メータ(1936-)さんは,インドの出身,われわれの記憶に新しいのは,
2011年3月,フィレンツェ歌劇団を率いて来日しましたが,東日本大震災に遭遇,福島原発事故の影響を危惧するフィレンツェ市長の帰国命令によって日程半ばで中止となりました。
「日本の友人たちのために何も演奏できずに去るのは悲しい」と涙しました。
2011年4月10日,多くの外国人演奏家の来日キャンセルが続くなか,東京のオペラの森公演でベートーヴェンの「第九」(管弦楽はNHK交響楽団)を渾身の演奏し,観客は熱狂的に迎え,収益は全額寄付されるチャリティコンサートでした。

2002年の指揮者は小澤征爾(1935-)さんでした。
観客席には元モデルの妻,俳優の息子たちの顔が見えました。

観客といえば,以前,久米宏「ニュース・ステーション」で夜桜中継をしていた元銀行員の姿を何度も目にしました。

一度は生で見てみたい聴いてみたいという願望はありますが,なにせ,日本からの観劇ツアーがありますが,なんと,お一人様120万円(!)からの費用では,おいそれとは行けません。
ネットから自分で座席を確保できますから,ホテルも自分で予約して,格安航空券を利用すれば,何分の一かの費用で可能なはずです。

美しく青きドナウ」(An der schönen blauen Donau)は,1866年の普墺戦争(プロイセン王国とオーストリア帝国との戦争)で大敗し,失望の底に沈んだウィーン市民を慰めるために,ヨハン・シュトラウスⅡ(1825-1899)が1867年に最初,男声合唱曲として作曲しましたが,不評のため,管弦楽曲に書き直されて,人気が出ました。オーストリアの第2の国歌といわれています。

やはり年頭は,2012年ニューイヤーコンサートでのマリス・ヤンソンス指揮の「美しく青きドナウ」にしましょう。
ヤンソンス(1943-,ラトビア)は来年2016年の指揮者にも予定されています(3回目)。

実際の観劇では見られない(と思います)バレエがTVでは見られるのが良いところですね。
この2012年は特にバレエに趣向が凝らされており,上記の踊りの舞台もベルヴェデーレ宮殿ですが,そこの絵画館に所蔵されているクリムトの「接吻」のまえで,絵から抜け出たように踊るバレエ・シーンもありました。(バレエはウィーン国立バレエ団)

さて,
松の内」とは,正月の松飾がある間の称ですが,関西では昔ながらに15日までですが,関東では7日までと短縮されています。

また,
1月7日には,正月のごちそうに疲れ気味の胃を休めるために,春の七草を入れて炊いた七草粥(ななくさがゆ)を食べる習慣があります。
ところで春の七草は,つぎの和歌で覚えます。

せり・なずな ごぎょう・はこべら
ほとけのざ すずな・すずしろ
これぞ七草

ここに,
「なずな」はペンペン草
「ごぎょう」はハハコグザ
「はこべら」はハコベ
「ほとけのざ」はコオニタビラコ
「すずな」は蕪(かぶ)
「すずしろ」は大根

さらに,
1月8日は初薬師
1月10日は十日恵比寿(えべっさん)
1月14日は四天王寺どやどや
1月18日は初観音
1月21日は初弘法(初大師)
1月24日は初地蔵若草山山焼き
1月25日は初天神
1月28日は初不動

と「初」の付く行事がめじろ押し,1月は寒いのに,何かと心急き(こころぜき)な時節なのです。
風邪など引かないよう,元気にお過ごしください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です