眠れぬ夜に

日本の気候は,そのほとんどが「温帯」に属しています。

したがって,1年のうちに春・夏・秋・冬と四季の移り変わりがあり,美しい自然を楽しむことができます。
また,季節風の影響を受けるのも特徴としてあげられます。
冬は,大陸から冷たい風が吹くため寒く,日本海側には雪をもたらします。
夏は,太平洋からの湿った風が吹くため,暑く雨の多い気候となります。
そして,春と秋には梅雨や秋雨と呼ばれる時期があります。
しかし,日本列島は北から南へと細長く,緯度の差が大きいため,気温・降水量は様々で,地域によって気候が変わります。

ところが,最近,多くの地域で熱帯夜がつづいています。
雨がふれば,夕立というより,熱帯のスコールのような驟雨が降ります。
ということは,日本は熱帯化しているのではないか,という議論があります。

そんな暑い夜に,眠られぬ夜に,子守歌などどうでしょうか?

世界三大子守歌というのがあります。
1.モーツァルトの子守歌
2.シューベルトの子守歌
3.ブラームスの子守歌
いずれも日本語の名訳があります。

ドイツのヴェルニゲローデ合唱団がこの3つの子守歌を歌っています。順番は逆です。

通称モーツァルトの子守歌といわれているものは,じつは同時代の医師ベルナルト・フリースが作曲したことが判明しています。

モーツアルトの子守歌』(フリースの子守歌
F.W.ゴッター (Friedrich Wilhelm Gotter)・作詞

Schlafe, mein Prinzchen, schlaf’ ein!
Schäfchen ruh’n und Vögelein.
Garten und Wiese verstummt,
auch nicht ein Bienchen mehr summt,
Luna mit silbernem Schein
gucket zum Feaster herein.
Schlafe beim silbernen Schein,
Schlafe, mein Prinzchen, schlaf’ ein,
schlaf’ ein, schlaf’ ein!

Alles im Schlosse schon liegt,
Alles in Schlummer gewiegt;
reget kein Mäuschen sich mehr,
Keller und Küche sind leer,
nur in der Zofe Gemach
tönet ein schmachtendes Ach!
Was für ein Ach mag dies sein?
Schlafe, mein Prinzchen, schlaf’ ein,
schlaf’ ein, schlaf’ ein.

Wer ist beglückter als du?
Nichts als Vergnügen und Ruh!
Spielwerk und Zucker vollauf,
und noch Karossen im Lauf,
Alles besorgt und bereit,
daß nur mein Prinzchen nicht schreit,
Was wird da künftig erst sein?
Schlafe, mein Prinzchen, schlaf’ ein,
schlaf’ ein, schlaf’ ein.

堀内敬三・訳/作詞

ねむれよい子よ 庭や牧場に
鳥もひつじも みんなねむれば
月はまどから 銀の光を
そそぐ この夜
ねむれよい子よ ねむれや

家の内外 音はしずまり
たなのねずみも みんなねむれば
奥のへやから 声のひそかに
ひびくばかりよ
ねむれよい子よ ねむれや

いつも楽しい しあわせな子よ
おもちゃいろいろ あまいお菓子(かし)も
みんなそなたの めざめ待つゆえ
夢にこよいを
ねむれよい子よ ねむれや

シューベルト(Franz Peter Schubert,1797-1828)が19歳のときに作曲された子守歌。15歳のときに亡くなった母親への思いが切ないほどに込められた名曲です。

シューベルトの子守歌』(1816)

Schlafe, schlafe, holder süßer Knabe,
Leise wiegt dich deiner Mutter Hand,
Sanfte Ruhe, milde Labe,
Bringt dir schwebend dieses Wiegenband.

Schlafe, schlafe in dem süßen Grabe,
Noch beschützt dich deiner Mutter Arm,
Alle Wünsche, alle Habe
Faßt sie liebend, alle liebewarm.

Schlafe, schlafe in der Flaumen Schoße,
Noch umtönt dich lauter Liebeston,
Eine Lilie, eine Rose
Nach dem Schlafe werd’ sie dir zum Lohn.

Schlafe, schlafe in der Mutter Schoße,
Noch umtönt dich holder Liebeston,
Eine Lilie, eine Rose
Nach dem Schlafe werd’ sie dir zum Lohn.

内藤 濯(あろう)・訳/作詞

眠れ眠れ 母の胸に
眠れ眠れ 母の手に
こころよき 歌声に
結ばずや たのし夢

眠れ眠れ 母の胸に
眠れ眠れ 母の手に
暖かき そのそでに
包まれて 眠れよや

眠れ眠れ かわい吾子
一夜(ひとよ) 寝(い)ねて さめてみよ
くれないの ばらの花
開くぞや まくらべに

ブラームス(Johannes Brahms,1833-1897)がハンブルクで指導していた女声合唱団の一員ベルタ・ファーバーに次男が生まれたことを記念して作曲されました。

ブラームスの子守歌』(1868)

Guten Abend, gut’ Nacht
Mit Rosen bedacht
Mit Naglein besteckt
Schlupf unter die Deck’
Morgen fruh, wenn Gott will Wirst du wieder geweckt
Morgen fruh, wenn Gott will Wirst du wieder geweckt

Guten Abend, gute Nacht,
von Eng’lein bewacht,
die zeigen im Traum
dir Christkindleins Baum;
schkaf’nun selig und suess, schau’ im Traum’s Paradies,
schkaf’nun selig und suess, schau’ im Traum’s Paradies.

堀内敬三・訳/作詞

眠れよ吾子(あこ) 汝(な)をめぐりて
美(うるわ)しの 花咲けば
眠れ 今はいと安(やす)けく
あした窓に 訪(と)いくるまで

眠れよ吾子 汝が夢路を
天(あま)つ使い 護(まも)りたれば
眠れ 今はいと楽しく
夢の園に ほほえみつつ

日本の子守歌は,大阪ローカルですが,私の伯母がよく歌っていたそうです。
天満の子守唄(天満の市)』があります。
NHKのTVドラマ「銀二貫」で流れていました。ドラマ自体の出来は今一でしたが。

ねんねころいち 天満の市で
大根(だいこ)そろえて 舟に積む

舟に積んだら どこまでゆきゃる
木津や難波の 橋の下

橋の下には 鴎(かもめ)がいやる
鴎とりたや 竹ほしや

竹がほしけりゃ 竹やへござれ
竹はゆらゆら 由良之助

ところで
子守歌ではないですが,眠れぬ夜にピッタリの曲があります。
1951年,当時すでに早稲田大学グリークラブのOBであり,かつ指導者であった磯部俶(1917-1998)が,神奈川県津久井渓谷・夫婦園で夏合宿をしていたとき,なかなか寝ない部員たちを鎮めるために即興でつくったのが,合唱曲「遥かな友に」です。

静かな夜ふけに いつもいつも
思い出すのは おまえのこと
おやすみやすらかに たどれ夢路
おやすみ楽しく こよいもまた

明るい星の夜は 遥かな空に
思い出すのは おまえのこと
おやすみやすらかに たどれ夢路
おやすみ楽しく こよいもまた

寂しい雪の夜は いろりはたで
思い出すのは おまえのこと
おやすみやすらかに たどれ夢路
おやすみ楽しく こよいもまた

これだけ聴くと,頭が冴えてきて,さらに寝つきが悪くなるかもしれませんね。

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