たまごの話

たまごは,われわれにとって,昔からとても馴染み深い食べ物です。

西洋では「生命の象徴」とされていて,Easter egg〈復活祭の卵〉と言われ,復活祭の前日にうさぎ(bunny)が卵を持ってくる,という言い伝えから,彩色したたまごを贈り物にしたりします。

ことわざや故事でも,

丸い卵も切りようで四角
(物事はやり方で次第で円満にも行けば,角が立つこともある)

● コロンブスの卵
(誰にも可能なことでも,最初にすることの難しさをいう語)

鶏が先か,卵が先か
(互いに循環する原因と結果の端緒を同定しようとする,因果性のジレンマ)

など,いろいろとたまごが使われています。

また,たまごには「未熟だけれども,これから成長の見込みがある」というイメージがあり,「学者の卵」とか「画家の卵」のように,初心者や駆け出しの者を意味する場合に使われます。

さらに昔から,たまごは滋養強壮で知られており,イタリア映画『ひまわり』でも,新婚のソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニの住む家の窓辺に,毎朝,新郎の母親から籠いっぱいの卵が届けられて,二人は辟易する,というのもありました。

実際,たまごは栄養豊富で,たまご2個分で,( )内は1日の必要量の割合〔%〕

・エネルギー  157kcal (8%)
・たんぱく質  12.8g    (26%)
・脂質     10.7g    (19%)
・ビタミンA  15μg (26%)
・ビタミンB2  0.45mg(38%)
・ビタミンB12  1.0μg     (42%)
・ビタミンD   3.1μg    (62%)
・ビタミンE  1.1μg     (14%)
・リン     187mg  (21%)
・亜鉛     1.4mg    (20%)
・鉄      1.9mg    (18%)

たまごは栄養面だけではなく,その値段でも優等生です。
現在のたまご10個の値段は,地域によっても異なりますが,おおむね150~200円といったところでしょうか。もちろん,100円以下(88円とか98円)の特売もあります。

ところで,茶色いたまごと,白いたまごの違いをご存知ですか?
「茶色の方が栄養価が高い」「茶色の方がおいしい」「茶色の方が上等」などと思っていませんか?

じつは,殻の色を決めるのは,鶏のDNAによるものです。
すなわち,たまごを生む親鳥が白ければ白いたまご,茶色であれば茶色のたまごを産み落とすのです。
中身は,殻の色とまったく関係がありません。

一般に,茶色のたまごが高いのは,茶色の鶏の方が体のサイズが大きめなので,その分よく食べます。その餌代が値段に跳ね返ってきているのです。
栄養価の高いたまご,おいしいたまご,高級なブランドたまごは存在しますが,それは主として,餌の違いによるものです。

たまご料理,いろいろありますね。

子供のころ,なぜかオムライスが好きでした。外食ではいつも注文していた記憶があります。チキンライスが薄皮のたまごで包まれてケチャップがかかっていました。

丼物なら親子丼,スパゲッティならカルボナーラです。
サンドイッチもたまごサンドだけを売りにした店があります。

家庭の厚焼きたまごも,料亭では「だし巻きたまご」になり,究極はウナギを内包した「うまき」が最高です。

月見うどんも,「たまごとじ」になると少し高級感が出て,茶わん蒸しは全くの高級品です。

ゆでたまごは関西では「にぬき」と呼ばれ,最近では半熟の温泉たまごが人気です。

目玉焼き(sunny-side up),スクランブル・エッグ(scrambled eggs,炒り卵),ゆでたまこ(boiled egg),オムレツ(omelette,仏語)は外国語の表現が一般的になっています。

日本的な象徴は,スキ焼にたまごをつけて食べる食べ方,そして,究極のたまご掛けご飯は日本にしかありません。

ところで,
ある女医さんがこんな新聞記事を書いていました。
あるスポーツジムに併設されたレストランが良いと聞いて,出かけました。そこは一般客も入店できるようになっていて,彼女が座った近くに,痩身の若い男女が居て,テーブルにはゆでたまごが6個ものっていました。店頭に「持ち帰り不可」と書かれていたのを不思議に思い出して,不審に思っていると,彼らは黄身を上手に分けて捨て,白身だけを食べた,というのです。
また,べつのときに,アフリカの西海岸にある貧しい島国に立ち寄ったときに,トランクを紛失し,現地の店で買ったTシャツを着て所在なくとぼとぼと歩いていると,小さな薄汚れた少女に肩をたたかれて,少女は持っていたパンを半分に割って差し出した,というのです。
みなさんはこの対比をどう感じましたか?

この記事を見て思い出したのが,70年前の話です。
占領軍のGHQ(General HeadQuarters,総司令部)のマッカーサー(Douglas MacArthur,1880-1964)が,明日の朝食はたまご2個の目玉焼きにしてくれ,と頼のみましたが,朝食には注文した目玉焼きが出ず,昼過ぎになってようやくたまご一つの目玉焼きが出てきた,というエピソードです。
それで,彼は日本の食料事情がいかに逼迫(ひっぱく)しているかを実感し,ララ物資の支援につながるという話です。
ララ物資とは,ララ(LARA,Licensed Agencies for Relief in Asia:アジア救援公認団体)が提供した日本向けの援助物資で,1946.11~1952.6まで続きました。
援助全体の75%は食糧,20%は衣料で,多くの日本国民は,この支援で飢餓から救われました。

たった70年前のことです。そして現在でも飢えている人たちは世界中にたくさんいるのです。
個人的な見せかけの肉体美のために,大切な食糧を捨て去るような不心得な日本人が,どうして出てきたのでしょうか。
歴史を忘れるな,歴史は繰り返すぞ!
この辺で考え方を徹底的に再考しないと,とんでもないしっぺ返しが来そうです。

今回は,季節がら,この曲にしましょうか。

まっかな秋』 薩摩 忠・作詞 小林秀雄・作曲
NHK「みんなのうた」1963.10

まっかだな まっかだな
ツタの葉っぱが まっかだな
もみじの 葉っぱも まっかだな
■沈む 夕日に てらされて
■まっかなほっぺたの 君と僕
■まっかな秋に かこまれている

まっかだな まっかだな
カラス瓜って まっかだな
とんぼのせなかも まっかだな
■夕焼雲(ゆうやけぐも)を ゆびさして
■まっかなほっぺたの 君と僕
■まっかな秋に よびかけている

まっかだな まっかだな
ヒガン花って まっかだな
遠くの たき火も まっかだな
■お宮の 鳥居を くぐりぬけ
■まっかなほっぺたの 君と僕
■まっかな秋を たずねてまわる

薩摩 忠(1931-2003)東京出身の詩人,慶応大学卒,堀口大学・藤浦洸に師事,海外児童文学の翻訳多数。

小林秀雄(1931-)東京出身の作曲家,東京藝大音楽学部作曲科卒,声楽・ピアノ曲の作曲,代表作は「落葉松(からまつ)」(野上彰・詞)。

最近,世の中がおかしな方向に向かっていて,非常に危惧しています。

ドイツでは,今年の8月に,自然エネルギー利用発電量が,需要量の84%を記録しました。
ドイツ議会は2011年の福島原発事故以後,原子力発電所は全て廃炉にする方針を全会一致でいち早く決議し,今回の快挙です。

それにひきかえ,当事国の日本は,福島原発の収拾も全くできていないのに,2015.8.11に九州電力の川内(せんだい)原発の再稼働を認めました。

2015.10.1に政府は防衛装備庁を発足させ,武器輸出を増大する方針を明確にしました。経済界は,もろ手を挙げて賛成しています。
日本は平和を愛し,戦争をしない国だったはずです。
戦争を助長するような「死の商人」に成り下がろうとするのですか!

これはカジノ(casino,イタリア語)建設を推進する考え方に共通します。
賭博(とばく)の寺銭(出来高の幾分を貸元や席主に支払う)で財政を補うやり方は,まったく不健全です。
儲かりさえすれば,何をやっても良いのでしょうか。

かつて,佐藤栄作内閣の1968年,「核を持たず,作らず,持ち込ませず」の非核三原則を打ち出し,国是となり,その後の歴代の内閣でも遵守されてきました。そして,このことで1974年にノーベル平和賞を受賞するに至ります。
もっとも後に,沖縄に核が持ち込まれていたことが明白になり,平和賞委員会は「ノーベル賞委員会が犯した最大の誤り」と表明しました。

しかし,「非核三原則」は,武器を輸出して外貨を稼ごうという,いやしい考え方とは対極にあります。

新聞の投稿欄にこういう記事がありました。
尖閣諸島(東シナ海,石垣島の北方),竹島(島根県),北方領土(択捉,国後,歯舞,色丹)などの領土問題が存在するので,安保法制は必要だ,というのです。

すごい意見ですね,しかし,同様の内容の意見を持つ人は少なからずいます。
いわく「軍事力が弱いから他国から舐められている」と,思っている人が結構いるのです。

しかし,軍事力を増強して,両国間の緊張感を高めても,問題は決して解説しません。
こんなことで戦争に発展したら,元も子もありません。

領土問題で,一方が引き下がることは,先ずないですから,辛抱強く平和的に交渉して,共同利用する,というような方向に持って行くしかないのかもしれません。

先の自民党の総裁選挙で野田聖子氏が立候補しようとしたけれど,できませんでした。党所属の国会議員20人の推薦人が必要でしたが,安倍氏の切り崩しで,集まらず,立候補が出来ませんでした。結果,無投票で安倍氏の続投が決まりました。

対立する意見を完全に封じ込めるというのは,独裁者のやり方です。

NHK報道番組「クローズアップ現代」のやらせ疑惑で,放送倫理・番組向上機構(BPO)は「重大な放送倫理違反があった」とする意見書を公表しました。
その中で,この問題をめぐって放送に介入する政府・与党の動きが見られたことから「放送の自由と自律に対する圧力そのもの」と厳しく批判しました。

マスコミをコントロールしようとするのは独裁者の常とう手段です。

安保法制の反対運動で,シールズ SEALDsが活躍しました。
SEALDs(シールズ:Students Emergency Action for Liberal Democracy – s)は,「自由で民主的な日本を守るための,学生による緊急アクションです。担い手は10代から20代前半の若い世代です。私たちは思考し,そして行動します」と掲げています。

若い世代も立ち上がりました。
黙っていては,まずます危うい方向に進んで行きます。
悪い流れを断ち切りましょう。

物言えば唇寒し秋の風   芭蕉

「何事についても余計なことを言うと災いを招く」という意味ですが,言わずにはおれない,言わないといけない,ことも世の中にはたくさんあるのです。

ますます秋風が身に染みる季節になりましたが,健康に注意して,元気にお過ごしください。

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