食通の時代?

食欲の秋」とは,秋は旬の食材が多く食欲が大いにそそられ,食べる楽しみこそが秋の醍醐味だ,というような言葉で,「味覚の秋」とも言います。 

フランス語のグルメ(gourmet)は「食通」の意味で,グルマン(gourmand)は「健啖家・大食漢」のことです。

最近,テレビでも自称「食通」の人たちが大勢登場して,何が美味しい,だとか,ここがお勧めとか,いささか,それこそ食傷気味です。

ミシュラン(Michelin)はフランスのタイヤ・メーカーで,世界で初めてラジアルタイヤを製品化し,2005年にブリヂストンに抜かれるまで世界最大のタイヤ・メーカーでした。

そのミシュランがタイヤの売り上げを伸ばすために,道路地図旅行ガイドブック(グリーン・ミシュラン)そしてレストラン・ホテルガイドブック(レッド・ミシュラン)をつくり,評価を星の数で格付けして,いまや世界で年間100万部を発行しています。

そのミシュランガイドも近年ヨーロッパでは影響力が低下してきて,新しい市場としてアメリカや日本で積極的に展開してきています。

現在,日本では,「東京・横浜・湘南」編と「関西」編の2種類が発行されています。

三ツ星レストランともなれば,1人で数万円は下らないので,庶民が気軽に行けるような店ではありません。

かたや日本は大阪が生んだ回転寿司は,安くて早くて,それこそ手軽に利用できる庶民の店です。

先日,昼食時にあるチェーン店に入りました。店は混んでいて,私の隣にお腹のせり出した中高年の男性があとから座りました。すると10分もしないうちに,勘定するではありませんか。見るとはなしに見ると,なんと既に11皿が積み上がっているではありませんか!
ちょっとちょっと!あまりに早食いで食い過ぎです!

早食いをすると,満腹中枢が刺激されて食欲にブレーキがかかる前に,食べ過ぎてしまいます。血糖値が急上昇し,インスリンが糖を脂肪に変えるため,それがカラダに蓄積し,肥満を加速させます。

やはり食事は頭でしなければなりません。
人体に必要な栄養源はすべて口から入ります。
バランスの良い食事をするのが健康の基本です。

つぎは食べ方の問題です。

ある日本人が英国に留学していて,親しいイギリス人と食事を共にしているとき,その人は食べやすいようにと,ステーキを先にナイフで刻んで,右手にフォークを持ち替えて食べていました。
すると友人のイギリス人は「そんなアメリカ人のような下品な食べ方はイギリスではやめた方が良い」と忠告してくれた,というのです。

そのイギリス人も一目置くのが,グルメの国フランスです。

そのフランス人たちと数か月間毎日一緒に昼食をする機会がありました
職場のレストランでの昼食とはいえ,かなりたくさんのバリエーションがあり,デザートまで注文できました。
フランス人たちは食事を楽しむんですね。
毎日同じ人と顔を合わせながら,なにをこんなに話すことがあるのだろうと思うくらい,よくしゃべります。
ところが,そんなにしゃべりながら,食事はドンドン片付いていくのです。
しかし,口から,食べ物が見えたりは決してしません。
いつ飲み込んでいるんだろうと不思議に思いました。
なにせ,食事だけに集中している私がいつも食べ遅れるのです。
フォークやナイフの使い方もみんな上手で,格好よかったですね。

一つはっきりしていることは,彼らは料理をかなり細かく切って小片にして口に入れます。だから,早く呑み込めるし,口の周りも汚れないし,第一,食べ方が上品に見えます。

TV番組を見ていても,みなさん切り方が大きいですね。
大きく口をあけてパクリと入れて,長いことモグモグと咀嚼していますね。
うどんやソバの影響で,パスタなど思わず音をたてて吸込んでしまうことがありますが,西洋では完璧なマナー違反です。

日本人なら,まずは箸の持ち方使い方でしょうか。
よくグルメ番組に出てくる中高年のタレントで,押し出しの良い人がいますが,箸の持ち方がへんで,コメントに説得力がなくなります。
日本人の基本的な教養として箸ぐらいはちゃんと使えるようにしましょう。

だいたいが,美味いものばかりを外食していると,健康に良くないことが多いです。
健康食を売り物にしている店を除いて,おいしいものを作るのに,それが身体に良いかどうかなど,考慮の外です。

TV番組などで,料理を評価するのに,「おいしい!」「やわらかい!」「ジューシー!」の三つが,語彙の貧弱なタレントの決まり文句のようです。

がいして,柔らかいものばかりを食べていると,余り噛まないので,唾液が十分に分泌されず,内臓の消化吸収に負担をかけ,また口内に雑菌が増えて虫歯歯肉炎になりやすくなります。

よく噛むことで,脳内に流れる血流量が増え,脳が刺激されます。

日本古来の,雑穀・いも類・根菜類・乾物などの硬い食材をしっかりとって,よく噛んで食事することが健康につながります。

これらこそが,ユネスコ無形文化遺産にも登録された「和食 日本人の伝統的な食文化」の原点です。

食欲の秋には,こんな楽しい歌はどうでしょうか。

おなかのへるうた阪田寛夫・作詞 大中恩・作曲(1964)

どうしておなかがへるのかな
けんかをするとへるのかな
なかよししててもへるもんな
かあちゃん かあちゃん
おなかとせなかがくっつくぞ

どうしておなかがへるのかな
おやつをたべないとへるのかな
いくらたべてもへるもんな
かあちゃん かあちゃん
おなかとせなかかくっつくぞ

阪田寛夫(1925-2005)さんは大阪市生まれの詩人・小説家・児童文学作家,元宝塚歌劇団の花組男役トップスターの大浦みずきは次女,大中恩は従兄弟です。東京帝国大学文学部卒。代表作は,小説『土の器』芥川賞,子供の歌『サッちゃん』など多数。

大中恩(1924-)さんは東京生まれの作曲家,父は『椰子の実』の作曲者の大中寅二です。東京音楽学校(現東京藝術大学)作曲科卒。代表作は「いぬのおまわりさん」「サッちゃん」など子供の歌,合唱曲など多数。

お腹の減ったときに食べる食事が一番おいしい料理となります。
そうすると,料理をおいしく頂くためには,適当な運動をするとその後の食事がおいしくなりますね。
だから「スポーツの秋」は「食欲の秋」につながります。

ただし,食間が空きすぎて,お腹が減りすぎると,身体の免疫力が低下すると言われていますから,あまり長時間空腹でいることは避けましょう。

バランスの良い旬の食材をつかった歯ごたえのある,塩分控えめの日本の伝統的な料理を控えめに取ることが健康に良いですね。

みなさんも良く考えて食欲の秋を満喫してください。

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