やむにやまれぬこと

よのなかには
やむにやまれぬ」ということが存在します。
今回は,私にとって,どうしても言っておきたい,言っておかねばならないと思うことを書きます。

環境」という大きなテーマの下で研究をしてきました。

明確に「環境」という言葉を意識したのは,学会主催の講習会で,大阪大学名誉教授・新津靖博士の話を聞いてからです。
新津先生(1905-2005)は長野県佐久のご出身で,長身・痩躯の大音声の持ち主で,話がまことにおもしろく,引き込まれます。
大阪大学に日本で初めて環境という名を付した「環境工学科」(1968)を創設されました。

大阪万博(1970)のころ,公害がすさまじく,企業も防止の努力をすべく,学習会が義務付けられ,そこで「エコロジー(生態学)」という言葉を初めて,大阪市立大学教授・吉良竜夫博士から聞きました。
吉良先生(1919-2011)は大阪市の生まれですが,穏やかな語り口で,「自然界の生態系を乱すのは,神をも冒涜するしわざ」という主旨の鮮烈な言葉を伺いました。

建築の分野に,建築環境工学という論理的な分野を確立されたのは,京都大学総長で名誉教授・前田敏男博士でした。
前田先生(1908-1991)は高知県のご出身で,古武士を思わせる風貌と体格で,まわりを圧倒する存在でした。
先生の「徹底的に考える」という風習は弟子の先生方にも連綿として受け継がれており,じつは私も孫弟子の末席を汚すものの一人ですが,その洗礼は充分に受けました。

ところで,これからが本題ですが
関西電力大飯原発3,4号機(福井県おおい町)に,再稼働は危険だ,として福井県の住民ら189人が関西電力を相手取って運転差し止めを求めた訴訟の判決が5月21日,福井地裁でありました。
樋口英明裁判長は「大飯原発の技術や設備は冷却や放射性物質の閉じ込めに欠陥がある脆弱なもの。運転により人格権が侵害される危険がある」と厳しく指摘しました。
原発の運転差し止めを命じた司法判断は福島事故後初のことです。

ここで
原子力発電の問題点を整理しておきましょう。

原発の利点
・安定した電力供給の可能性
・発電時に二酸化炭素を排出しない(地球温暖化の防止)
・燃料が少なくてすむ
・経済性が高い(重大事故を考慮しなければ)

問題点
・重大事故による周辺の被害
・放射性廃棄物を作り出す
・ウラン資源の枯渇問題
・施設建設にコストがかかる(火力発電とくらべて)
・軍事転用による核拡散の可能性(国際的に)
・立地場所が限定される(地質学的に)
・発電施設および廃棄物へのテロの危険性

もともとそんなにすぐれた発電方法ではない,むしろとても危険性をはらんでいるもの,という認識を,当初から私は持っていました。
初期に開発に携わった関係者からも,問題が多すぎて,欠陥が多すぎて,とても商業ベースに乗るような代物ではない,という意見を聞きました。
それらを覆い隠すようにしてこんにちまで来たのではありませんか。

この判決結果に対する各新聞社の社説の見出しは

朝日
判決「無視」は許されぬ
毎日
なし崩し再稼働に警告
読売
不合理な推論が導く否定的判決

と,大新聞といわれる3社で,こうも意見が分かれるのか,という実感です。
よく読んで何が正しいのか,自分自身で判断することが必要です。

ものはついでに
放送マスメディア(大量伝達手段)のNHK籾井勝人会長の問題発言について,商社時代の先輩OBが彼のことを語っています。

「『政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない』という就任会見での発言は籾井君の商社マン人生そのもの。彼は上司から『右向け右』と命じられたら忠実に一晩中でも右を向いているような男だった。上司は絶対。自分の部下にも服従を求めた。彼の辞書に『不偏不党』はない。こういう人物を公共放送のトップに任命した人たちの常識を疑う」

常識を疑われているのは任命した安倍首相です。

「集団的自衛権」の問題も,こじつけのような論理展開で,勝手に決めてしまおう,という姿勢が見えます。
国境線が長大な日本で,外からの攻撃に,軍事力で防衛することは本来,不可能なことを理解すべきです。
海岸線に設置した原発を攻撃されたら,日本はたちまち沈没してします。

だからこそ
少々の摩擦があっても,近隣の国々とは,友好的な外交関係を維持する努力を怠ってはならないのです。
それが最大の安全保障の方法です。

最近はやりの
近隣国へのヘイト・スピーチ(憎悪表現)によって,不安をあおるような言動は避けなければなりません。

いまわが国は,独裁化・軍国化へのノー・リターン・ポイント(帰還不能点)にいる,と本気で心配している人たちが大勢います。

祖父・岸信介を敬愛する安倍晋三首相ですが,なにぶん三代目ともなると

売り家と唐様で書く三代目

と故川柳にもあるように,家どころか,国まで,国民まで,売ってしまいかねない危うさを感じているのは,私だけでしょうか?

「やむにやまれぬこと」への2件のフィードバック

  1. URLありがとうございました。
    早速拝見いたしました。

    言葉の表現が乏しく、そして難しい記事でしたのでコメントするのに悪戦苦闘しております…苦笑

    私自身も原発には反対です。
    今回の福島の事故で、「いつなにが起こるか分からないリスクを背負っている。」と言うことは明確になったと思っています。
    ウクライナ繋がりですが、チェルノブイリ原発の事故は世界が忘れてはいけない事故だと思っています。どれだけ多くの尊い命が失われ、どれだけ多くの人が傷ついたのか…そして、人だけでなく、植物も、動物も、環境までも。人の力ではどうしようもできないものまで壊してしまいました。

    産み出されるとなくなることのない有害廃棄物。これを地下に埋めてしまってどうするのだろうかと思います。
    目に見えないところに葬ってしまえば良いと言う考え方。ばれないように片付けておけば、悪いことをしても良いんだ、という今の日本、いや世界のあり方に似ているような気がします。

    憲法改正にも反対です。
    武器、武力は持たないと、戦争はしないと約束したんじゃなかったの?と怒りと悲しみを覚えます。
    他国から攻撃を受けた時に日本を守れるように…と、武力に頼った考えですが、日本と他国とのもっと良好な交友関係を築こうという考えには至らないのでしょうか?
    世界から武器、武力、戦争がなくならない限り、平和な世界は来ないんじゃないかと思っています。
    自分さえ守れれば、儲かれば、良い暮らしができれば…と言うような考え方を根本から変えなければ、貧しい国はなくならないし、平等な世界にはならないと思います。

    今回この記事を読ませていただき、いろいろなことを考えました。今私が日本と言う恵まれた国で、悠々と暮らしている同じ時に、私よりも若い子供達が世界では何万人亡くなっているのだと考えると、胸が苦しく…なにもできない自分に腹が立ちます。

    お恥ずかしい話ですが、私自身、経済的にも精神的にも自立できておらず、世界を良くしたいと言える基盤さえもできていません。
    毎日、今日の自分にできる精一杯のことを頑張り、自分にできることを確実にこなして行く。そしていつか自分の夢を掴み、自立し、胸を張って意見できる大人になって、世界の平和と平等、貧しい国への支援に貢献していきたいと思います。

    長くなってしまい、そして、未熟でまとまりのないコメントで申し訳ありませんでした。

    これからもBLOG更新を楽しみにしています!今日もお疲れさまです!

    1. バレエ大好き Yunaさん
      長文のコメントをありがとうございます。
      真摯に受け止めていただいて,とてもうれしく思います。
      恋愛とおなじように,思っているだけでは伝わらないので,やはり適当な時期に声に出して発言することが求められます。
      恥ずかしくても,少々かっこ悪くても,勇気を出して主張することも必要です。
      Yunaさんが書かれている貧しい国への援助ですが,私は国際協力の仕事で,2年間,ある開発途上国に赴任しました。
      金も人も日本が全面的に支援しているのに,当事国の人々にはほとんど伝わらないもどかしさと無力感を嫌というほど味わいました。
      こちらの熱い思いが相手に素直に伝わらないのも,恋愛に似ていますね。
      正常な考え方ではこちらが良い方向ですよ,ということがそのまま実現されていかないもどかしさは大いにありますが,それでも粘り強くあきらめないで,少しでも良い方へ行くように,自分のできる範囲で,言い続けるしかないのでしょうね。
      お疲れさまでした。

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