言葉の力

言葉によって意思を伝える,ということはとても大事なことなんですが,実際,これがなかなか難しいのです。

発言者の表現力と,受け取り手の理解力に差異があって,十分に伝わらないことも多いんです。

これが教師や指導者の場合,発信者の言語表現能力が不足していると,思うように伝わらなくて,「言ってもわからない者には,力でわからせる」と,自分の能力不足を棚に上げて,腕力(暴力)を振るうことが,これまで多々ありました。
一見,その場が治まったように見えても,暴力を振るわれた被害者にとって,恨みが潜在して後々までも残ります。
このような単純な発想の人たちは明らかに指導者失格で,真剣に取り組んでいる誠実な指導者の足を引っ張っています。

言葉による発信力を最も必要とされる仕事の一つが,政治家でしょうか。

2016.5.27,オバマ米大統領は広島の平和記念公園で17分間にわたりスピーチを行いました。
ゆっくりとした明瞭な発音で,原稿もなしで,話しかけるような態度で,中学生でも分るような英語でした。
これが政治家のいわゆる「記憶に残る演説」か,と思いました。
大統領側近の副補佐官は,オバマ氏は演説直前まで推敲(すいこう)を重ねていたと証言しています。
彼の訪問の主たる目的は,追悼・慰霊よりも,歴史に「核時代放棄」を宣言することだったのです。

このスピーチに続いて,安倍首相も所感を述べましたが,ライターの差もあって,国際社会に訴える点で弱いと感じました。

ここで保阪氏(6.11「毎日新聞」保阪正康の記事から)は,オバマのスピーチに対抗しうる,原稿なしで被爆国の悲しみと怒りを国際社会に伝え,そして核廃絶を訴えうる指導者は誰だろうか,と考えました。

戦後,首相の座にあったのは33人でした。オバマ大統領に対抗して,詩人や哲学者・宗教家・政治家などあらゆる能力を駆使して即興で所感を述べられるのは,吉田茂,石橋湛山,大平正芳,細川護熙,福田赳夫,小泉純一郎などではなかろうか,と述べています。

現在,参議院選挙の真っただ中です。自公連立政権は2/3の議席を確保し憲法改正を現実化しよとしていますが,選挙演説では自公のどの候補者も争点として「憲法改正」を公言していません。

これは,まったく選挙民を誤魔化す不誠実なやり方ではないでしょうか。

自民党の憲法改正草案のなかでも「9条」とともに,多くの賢人たちから問題視されているのが,「緊急事態条項」です。
これは,大災害や有事の際に国に強力な権限を与えるもので,かつてヒトラーワイマール憲法を無力化して独裁化したやり方に匹敵する,使い方のよって非常に危険なことが起こり得る恐ろしい条項です。

ご存知のように,英国で国民投票によってEU離脱が決まりました。
驚いたことに,現在,英国でのネット検索ワードの1位2位が「EU離脱で何が変わるの?」「EUってなに?」なんだそうなんです。
投票した人たちは,そんなこともよく知らないで,熱く舞い上がって,よくわからないまま,乗せられて投票した,ということです。

今回から,18歳から選挙権が与えられるようになりました。
将来のことをよくよく考えて投票しましょう。

ところで,今,ア・カペラ(a cappella)が熱いですね。
本来はイタリア語で「礼拝堂風に」という意味で,ルネサンス時代の教会合唱の様式で,無伴奏の合唱の様式でした。

1960年代に,スウィングル・シンガーズという男女8名のグループが,クラシックの名曲を歌詞なしで声だけの無伴奏演奏で,一世を風靡しました。

ポピュラー音楽では,ジャズでルイ・アームストロングが歌詞を忘れて即興で「ダバディダ…」とやって,スキャット(scat)が生まれたといいますが,1980年代に,マイク使用を前提に,声でパーカッション効果を出したりして,演奏に厚みを加えて流行ってきました。

以前は,グリー(glee)というのは,無伴奏の男声合唱を指し,大学のサークルで「グリー・クラブ」と名のる男声合唱団が質の高い演奏をして全盛の時代もありましたが,どうも,現在は,「アカペラ」グループにその座を奪われているような状況です。

それで,今回紹介するのは,Little Glee Monstor(リトル・グリー・モンスター)という女子高校生の6人組(大阪3,北海道1,山梨1,静岡1)です。2013年結成の若いグループですが,日本の女性ボーカルもここまで来たか,の感慨があります。

若い力は音楽だけにとどまりません。

2016.6.10,世界最高峰の一つ,英ロイヤルバレエ団は,平野亮一(32),高田茜(26)さんの二人がそろって最高位のプリンシパル(principal)に昇格した,と発表しました。日本人では吉田都,熊川哲也さん以来となります。

ちなみに,世界三大バレエ団とは

フランス オペラ座バレエ
ロシア  ボリショイ・バレエ
イギリス ロイヤル・バレエ

バレエは,ルイ14世(1638-1715)の時代に完成したといわれ,バレエ用語は世界共通で,ロシアでもイギリスでも,フランス語です。自らも「太陽王」と名のり,舞台に立ちました。ベルサイユ宮殿もこの時代に建てられ,文芸で黄金時代を現出しましたが,経済は疲弊し,その影響で,2代後のルイ16世のときに,フランス革命(1789)が勃発します。

さらに,2016.5.18,世界で最も権威のあるバレエ・ダンス賞の一つ,ブノワ舞踊賞をオニール八菜(23)さんが受賞しました。
現在,彼女はオペラ座のプルミエ・ダンスーズ(第1舞踏家)で,最高位のエトワール(「星」の意)の一歩手前です。
八菜さんはニュージーランド人との混血ですが,古い言葉で言えば「和魂洋才」で,大和撫子の繊細で優雅な心を世界で表現してもらいたいものです。

現在,梅雨の季節です。これが明ければ暑い夏が待っています。この厳しい季節,熱中症に気を付けて,暑さをしのぎ,食事に気を付けて,元気に乗り切ってください。

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