常識と教養と

クイズ番組が流行っているようですが,けっこう楽しんで見ています。自分の常識が試されているようで,一緒に参加しているような気がして,面白いのです。
しかし,いっけん理知的にみえる出演者が簡単な問題に答えられなかったり,常識的な易しいと思われる問題に正解して,待機席の人たちが「すごい!」と感嘆する様子をみると,とても違和感があります。

ここで,常識(common sense)とは,「普通,一般人が持ち,また持っているべき知識。専門的知識でない一般的知識とともに理解力・判断力・思慮分別などを含む」と定義されていますが,もちろん明確な基準がなく,簡単に常識・非常識の区別が,つけられません。
おそらく,その人の所属しているグループによって,常識のレベルが大きく違っていると考えられます。

しかし反対に,常識人と言われると,平均的で,特徴のない人を指すようで,あまり良い印象がありません。

でも,常識のない人と言われないように,日々,自分の常識を高めるべく,努力をして学習しておく必要があるのです。

似たような言葉に「教養」があります。
英語ではculture(文化)education(教育)の両方で表現します。その意味は「単なる学殖・多識とは異なり,一定の文化理想を体得し,それによって個人が身に着けた創造的な理解力や知識。その内容は時代や民族の文化理念の変遷に応じて異なる」と 説明されていますが,ますます分りにくいですね。
まあ,文化と教育に裏付けされた素養で,人格にも影響を与えるもの,とでも理解しておけばよいのではありませんか。

私のころは,大学には3・4回生の専門課程に入る前に,1・2回生のときに教養課程があり,自然科学・人文科学・社会科学・語学などの専門に関係のない教養を学ぶ機会がありました。
教養課程の学習をおろそかにして,専門課程に進級できなかったり,卒業の妨げになったりして,「教養がじゃまして」などという出来のよくないダジャレを言う人もいました。

教養を高めるには,単に知識を詰め込むだけではダメで,よく思考して,人間を磨くことが求められます。
人生において本当の教養は,けっして邪魔するようなものではありません。

たとえば,
森喜朗(早稲田外学卒,37-)東京オリンピック組織委員会委員長は首相のとき,IT(アイティ,Information Technology,情報技術)のことを it(イット,指示代名詞)と発音して,常識のないことを内外に示しました。

麻生太郎(学習院大学卒,40-)副総理は首相のとき,未曽有(みぞう)を「みぞうゆう」と発言して,あまりの常識のなさに顰蹙(ひんしゅく)をかいました。

もっとひどいのが安倍晋三(成蹊大学卒,54-)首相です。
彼の尊敬する祖父・岸信介元首相は,A級戦犯として巣鴨プリズンに囚われているとき,獄中で「和書,訳書,英書などを手当たり次第に読破し,小説,評論,思想・哲学書,宗教書,歴史・戦略論,詩集,歌集等々万般にわたる」を読み切ったそうです。
その孫である現首相はポツダム宣言(45,日本軍の無条件降伏を求めた13か条から成る宣言)さえもまともに読んでいないことを明言しました。

それどころか,
2月19日の衆議院予算委員会で,民主党の玉木雄一郎議員の質問中に,首相は『日教組!日教組!』と数回ヤジを飛ばしました。ところが,玉木議員は官僚出身で,むしろ自民党右派に近く,日教組とはもっとも遠い位置にいるのです。
そんな基本的な知識もなしに,『日教組!』という一言だけで非難しようとするのは,戦時中の『非国民!』にも似た発想で,恐ろしいことです。

また,
5月28日の衆議院安全法制特別委員会で,民主党の辻本清美議員が「戦争とは何か」という根本を語ったら,首相は『早く質問しろよ』とヤジを飛ばしました。

そもそもヤジるという行為は「第三者が当事者の言動を,大声で非難し,からかい,妨害する」ものなのです。
安倍首相は一番の当事者です。それを自分自身でヤジるとは,最も下品な行為で,教養の欠片もありません。

こんな安倍首相が,対抗馬もなく無投票で自民党総裁に再選されようとしています。

私たちはこのような常識教養もない人たちにいつまでも日本の政治を任せておいてよいのでしょうか。
まったく惨憺(さんたん)たる気持ちになります。

ところで,今年の夏は酷暑で,猛暑日(最高気温が35℃を超える日)や熱帯夜(最低気温が25℃を超える夜)が続きましたが,残暑のぶりかえしもなく,すんなりと秋に向かっています。
いっときセミの声で暑さを増幅させていましたが,いまや夜には虫の声で涼しさを耳からも体感させられています。

今回は季節がら,伝統的なこの曲にしましょうか。

赤とんぼ」 三木露風・詞 山田耕筰・曲(1927)

夕やけ小やけの 赤とんぼ
負(お)われれて見たのは いつの日か

山の畑の 桑の実を
子籠(こかご)に摘んだは まぼろしか

十五で姐(ねえ)やは 嫁に行き
お里のたよりも 絶えはてた

夕やけ小やけの 赤とんぼ
とまっているよ 竿の先

三木露風(89-64)兵庫県龍野町(現たつの市)出身,詩人・童謡作家・歌人・随筆家。
北原白秋(85-42)と並び,「白露時代」と呼ばれました。

山田耕筰(86-65)東京府本郷出身,作曲家・指揮者。
代表曲は,「からたちの花」,「この道」いずれも北原白秋・詞など。

これからは季節のかわりめ,日々の気温の変動も大きいので,天気予報にも注意して,温度変化に応じた着衣を考えて,すこやかにお過ごしください。

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