選手交代

選手交代といえば,まず思いつくのはプロ野球の投手でしょうか。

最近は,先発(starter),中継ぎ(setup man),抑え(closer)と分業化が進んでいます。
いつ,だれに交代させるのか,が監督にとって,采配の見せどころとなっています。

かつては,年間20勝がエースと呼ばれる条件,のようなものがあって,そのなかでも特筆されるのが,稲尾和久(1937-2007)西鉄ライオンズです。
18歳で入団し,新人の年から8年連続20勝以上,つまり

1956年  21勝   6 完投  262回
1957   35   20   373
1958   33   19   373
1959   30   23   402
1960   20   19   243
1961   42   25   404
1962   25   23   320
1963   28   24   386

なんとプロ入り7年で通算200勝を達成しています。
1959年は年間42勝ですよ。最近は20勝も挙げる投手なんていません。
昨年,藤浪(阪神)は14勝,7完投,登板199回,大谷(日ハム)は15勝,5完投,160回です。つまり,現在の一流と言われる投手の2倍以上の大活躍をし続けたのです。

1958年の日本シリーズでは,読売ジャイアンツを相手に,全7試合中6試合に登板,つまり出なかったのは第2戦のみ,第3戦から5連投,うち5試合に先発し,4完投。3連敗の後4連勝して,すべて稲尾の勝ち星で,「神さま,仏さま,稲尾さま」と崇められました。

現役のときに『鉄腕投手 稲尾物語』東宝(1959)という映画が作られ,父が志村喬,母が浪花千栄子,本人も出演し,評判になりました。
しかし,稲尾は鉄腕なだけではなく,映画のなかでも父・志村喬が「実るほど頭の下がる稲穂(稲尾)かな」と説いたように,謙虚な誰からも好かれる人柄の人でした。

最近,報道関係の番組のメーンキャスターの交代がめだってきています。

古館伊知郎(1954-)テレビ朝日『報道ステーション』(2004.4.5-2016.3.31)12年2,960回
東京都出身,立教大学経済学部卒,フリーアナウンサー。
プロレス中継で名前を上げました。紅白の司会も担当しました。
久米宏『ニュースステーション』を受け継いだ人気番組でしたが,「偏向報道」と何度もたたかれ,降板が決まりました。

国谷裕子(1957-)NHK『クローズアップ現代』(Today’s Close-up)(1993.4.5-2016.3.31)23年3,493回
大阪府出身,手塚山小学校,聖心インターナショナルスクール,ブラウン大学(国際関係学)卒,アナウンサー,同時通訳者。
政治・経済から芸術・芸能・スポーツまで硬軟取り混ぜて面白い番組でした。
才色兼備とは,この人のことをさす言葉,と思いました。
特に国際放送では,1日に6回,日本語と英語で放送し,英語版ももちろん国谷裕子さんの声でした。
さいきん番組で「やらせ疑惑」があり,降板が決まりました。
まったく,国谷さんの責任ではなく,損な役回りになってしまいました。

大越健介(1961-)NHK『ニュースウォッチ9』(2010.3.29-2015.3.27)5年
新潟県出身,東大文学部卒,NHK政治部記者。東大野球部では投手として通算50試合に登板し8勝27敗。
いわゆるNHKらしくなく,自分の意見を述べて,それが降板の原因になったらしいのです。

野球の投手交代は,監督が決めるので,その責任は明快です。

テレビ番組の場合,誰が交代を決定するのでしょうか。
ディレクターでしょうか,編成局長でしょうか,それとも社長なのでしょうか。
もし,時の政治勢力に遠慮して,自粛したとしたら,とんでもないことになります。

新聞やテレビなどのマスメディアは,時の権力に抗して,常に批判しチェックし続けなければ,世の中はおかしな方向へ行ってしまいます。

実際,国民の不安を無視し,原発は次々と再稼働に向かうし,集団的自衛権を容認する法案を強行採決するし,こんどは次の参議院選挙に自公が2/3以上の議席を確保してしまえば,いよいよ安倍首相悲願の憲法改正も射程圏内に入ったようにも見えます。

このような暴挙を黙って許しておいては将来の禍根となります。われわれの一人一人がしっかりと反対の意思表示をし,おかしな方向に行かないように言葉にし行動しなければなりません。

今回の曲は,この季節らしいこの歌にしましょう。

雪の降る街を』作詞:内村直也 作曲:中田喜直(1953)
歌:高英男ダーク・ダックス

雪の降る街を 雪の降る街を
想い出だけが 通りすぎてゆく

雪の降る街を
遠い国から おちてくる
この想い出を この想い出を
いつの日か包まん
あたたかき幸福(シアワセ)の ほほえみ

雪の降る街を 雪の降る街を
足音だけが 追いかけてゆく
雪の降る街を
一人心に 満ちてくる
この哀しみを この哀しみを
いつの日か解(ホグ)さん
緑なす春の日の そよかぜ

雪の降る街を 雪の降る街を
息吹とともに こみあげてくる

雪の降る街を
だれも分らぬ わが心
この空(ムナ)しさを この空しさを
いつの日か祈らん
新しき光ふる 鐘の音

この歌は,雪の中を一歩一歩踏みしめて歩くようなリズムで歌うのが良い,とされています(♩=72)。

内村直也(1909-1989)
東京生まれ,慶應義塾大学経済学部卒,岸田國士に師事,劇作家。ラジオドラマ,創成期のテレビドラマをてがけました。
代表作は「えり子とともに」など。

中田喜直(1923-2000)
東京の出身,東京音楽学校ピアノ科卒で,20世紀を代表する日本の作曲家です。
父は「早春賦」を作曲した中田章,兄は作曲家・ファゴット奏者の中田一次
代表曲は「雪の降る街を」のほか
夏の思い出江間章子・詞(1950)
めだかの学校茶木滋・詩 安西愛子・歌(1951)
ちいさい秋みつけたサトウハチロー・詩 伴久美子・歌(1955)
心のまどに灯を横井弘・詩 ピーナッツ・歌(1959)
君よ八月に熱くなれ阿久悠・詩 高岡健二・歌(1977)
など多数。

今の季節は二十四節気のうち大寒で,一番寒い時期とされています。暖冬と言われていたのに,大寒波が襲来しました。奄美大島では100年以上ぶりに雪が降り,沖縄でも初めて霙(みぞれ)が観測されました。この寒さを乗り切れば立春で,間違いなく春が訪れます。それまで,健康には十分に気を付けて,元気にお過ごしください。

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