神戸北野異人館めぐり

幕末の1858年,日米修好通商条約(いわゆる不平等条約)を締結し,横浜・神戸・函館・長崎・新潟の5港が開港することになりました。

神戸港が実際に開港したのは1868年のことです。
神戸は最も帝(天皇)の居住地・御所に近いため,外国人を嫌う帝の影響もあって,開港が遅れました。
当初は外国人の住居は居留地に限られていましたが,1899年の条約改正で内地雑居が認められ,多くの異人館が建設されました。

異人館とは,明治時代以降,欧米人(異邦人,異人)が居住するための住宅として建設された西洋館のことです。

童謡『赤い靴』(野口雨情・作詞 本居長世・作曲)でも
「赤い靴 はいてた 女の子 異人さんに つれられて 行っちゃった」と歌われていますね。

じつは筆者,学位を取るため,約10年間,神戸に通いましたが,それは阪急六甲までで,三ノ宮までは足が伸びませんでした。

今回はボランティアの方のガイドで北野異人館をめぐりました。あいにくの雨でしたが,そのおかげで参加者は筆者一人,プライベート・ガイドのように,普段は行かないようなところまで案内を頂きました。

<行先>  北野異人館
<体験日> 6月22日
<集合>  JR三ノ宮駅・中央改札口 北側 10:00
<時間>  1時間30分(予定)
<主催>  NPO法人KOBE観光ガイドボランティア
TEL:  078-251-8530
<開催日> 毎月第2,第3日曜日
<費用>  無料

<ガイド> 村上さん

ki01

生田神社

ki02

ご祭神は稚日女尊(わかひるめのみこと)で,日本書紀によると201年の創建となっています。
また延喜式に,各地より集まった稲を使い,生田神社の境内で神職が酒造りをして,国賓として朝鮮半島からの要人を迎えた際に振舞ったとあり,灘の酒造りの起源とも伝えられています。

また,神社に向かって左手に「生田の森」があり,小規模ながら鬱蒼とした森であり,心霊スポットのような,霊験あらたかな感じのする場所でした。

神戸ムスリムモスク

ki04

1935年に建立。
日本に現存する最古のイスラム教寺院。

カトリック神戸中央教会

ki07

1870年に旧居留地に設立された神戸最初のキリスト教会を,1923年にこの地に新築移転,阪神淡路大震災の後,2004年「カトリック神戸中央教会」を建設。
写真は内部のステンドグラス。

一ノ宮神社

ki08

生田神社を囲むように点在する神戸八社の一つ。
現在の社殿は1945年に戦災で消滅したものを再建。
ちなみに三ノ宮というのも八社の一つ。

神戸ハリストス教会

ki09

ギリシャ・ロシア正教の流れをくむ日本ハリストス正教会の教会。
神戸在住の白系ロシア人を中心に日露両国信徒が統一されて1952年に現在の地に「聖母就寝聖堂」を建立。

小磯良平アトリエ跡

ki10

小磯良平(1903-1988)は神戸出身の洋画家。
肖像画,とくに群像を多く手がけたことで知られる。
東京芸術大学名誉教授。

神戸バプテスト教会

ki11

1952年に建設。
その前は画家・小磯良平の屋敷とアトリエがあったが,戦災で焼失。

<コンビニエンス・ストア>

ki34

ki13

ローソンもセブンイレブンも北野界隈では一味ちがっておしゃれです。

仏蘭西館(西洋長屋)

ki17

木造の二階建で,正面の玄関から左右対象に軒を連ねる珍しい異人館で「洋館長屋」の別名をもっています。
現在の邸内はフランス美術品,豪華な調度品を中心に,アール・ヌーボーのガラス工芸家エミール・ガレらの作品やシャガール,パリ期の藤田嗣治氏らの絵画等も展示しています。

史跡三本松

ki19

ここは峠で昔から西国街道北回りの目印地点で,三本の松が象徴でしたが,現在は三本松大明神として松は切株のみが残っています。

プラトン装飾美術館(イタリア館)

ki22

大正の初期に建てられた歴史的伝統建造物です。
装飾性の高い18世紀から19世紀のヨーロピアンアンティーク・家具・調度品・絵画・彫刻の数々がぎっしり詰まった美邸は必見です。
また,館の南側にある洋式庭園には,プールがあり,プールサイドでは カフェやランチも楽しめます。

ラインの館

ki24

大正初期の建築で,木造2階建下見板張りオイルペンキ塗りで,開放されたベランダ,ベイ・ウィンドー,軒蛇腹,よろい戸など,明治時代のいわゆる異人館の様式をそのまま受け継いでいる建物です。
庭には蘇鉄や楠の大樹があり,心地よい緑陰をつくっています。
ここは入館が無料です。

風見鶏の館

ki29

1910年,ドイツ人貿易商ゴッドフリート・トーマス氏が自邸として建てた建物です。
北野・山本地区に現存する異人館の中で,レンガの外壁の建物としては唯一のもので,その色鮮やかなレンガの外壁と尖塔の風見鶏は北野異人館のシンボルとして欠かせない存在になっています。

萌黄の館

ki30

1903年,アメリカ総領事ハンターシャープ氏の邸宅として建築された洋館です。
その名のとおり,萌黄(もえぎ)色の外壁に包まれています。
2階のサンルームからは,神戸の美しい街並みが楽しめます。

北野天満神社

ki33

平清盛が1180年,福原遷都に際し,京都の北野天満宮を勧請しました。
60段の階段を上ると拝殿が,その奥に本殿があります。
拝殿の前からは神戸の市街が眺望できます。

<北野観光案内所>

ki32

風見鶏の館の前には北野町広場があり,その横に観光案内所があります。
ここで冷たいお茶をいただき,ガイドの村上さんとはここで別れました。

総 括
予定時間1時間30分を超えて,2時間余り,盛りだくさんに案内していただきました。
注意すべきは,ほとんどの異人館が500~1,000円の入館料をとります。
維持管理のために費用が必要とのことですが,かなりの出費となりますので,財布の準備が必要です。
複数館割引券がありますので,行きたいところを確認して購入するのがよいでしょう。
NHK朝の連続テレビ小説「風見鶏」(1977.10-78.4)の放映から異人館ブームに火がついた,といわれていますが,TVの話は実際との事実関係はありません。
ほとんどの異人館が阪神淡路大震災(1995.1.17)で壊滅的な被害を受けましたが,見事に復旧されました。
北に向かって,ハンター坂,北野坂,トーマス坂,天神坂,不動坂など,かなり急峻な登り坂がありますので,たくさん歩くことを覚悟して参加してください。
明治時代のいろんな国の住宅と種々の宗教の教会が見られるので興味のある方には絶好のツアーです。

総合評価】  (星一つのシルバー)
行ってみる価値はあります。
団体で行けば有料(格安)でガイドして頂けます。(予約要)