カナダにいるとき,ある求人案内に目をとめました。
その内容は,結構重要な求人にも関わらず極めて簡単で,職種・条件(バイリンガル)・年俸の3種でした。
バイリンガル(bilingual,2言語使用者)といっても,日本語と英語ではダメで,カナダでは当然,英・仏2か国語を指します。
ちなみに
勤務していた研究所の秘書さんは,私と話すときはきれいな英語でしたが,ホテルの予約をお願いするとき,フランス語で話していて,彼女の母語がフランス語であることが分りました。
そこで
北米(アメリカ,カナダ)では,求人のときに,「性別」と「年齢」を明記することが禁じられていることを知りました。
性差別(gender discrimination)表現の禁止は,日本でも
看護婦→看護師,助産婦→助産師
と呼び替えたりしていますが,英語ではもっと神経を使います。
もちろん女性のみに使うウエイトレス(wait-ress)やスチワーデス(steward-ess)はwait-person,flight attendantと言い替えるし,未婚・既婚を表すミス(Miss)ミセス(Mrs.)はミズ(Ms)に統一しています。
日本では,差別用語として,めくら,つんぼ,おし,とかの身体障害者に対する昔からの言葉を使うことが禁止されています。
ですから
「めくら滅法」(少しも見当を定めないさま)
「つんぼ桟敷」(いろいろな事情を知らされない状態)
「片手おち」(配慮が一方だけにかたよること)
は使ってはいけないことになっています。
戦後のリズム感あふれる快歌『買物ブギ』(村雨まさを・詞 服部良一・曲 笠置シヅ子・歌 1950)の最後で
「わてツンボで聞こえまへん」
「これまたメクラで読めません」
が放送で流れるとき,かならず音がありません。
つぎのYouTubeではハッキリ,明瞭に発音しています。
はたして,言葉を言い替えたら,差別意識はなくなるのでしょうか?
服部良一(1907-1993)は大阪市出身の作曲家,和製ポップスの創始者といってもよい存在。
なお,「村雨まさを」は服部良一のペンネームです。
代表作は,『買物ブギ』のほか
『別れのブルース』 藤浦洸・詞 淡谷のり子・歌(1937)
『蘇州夜曲』 西条八十・詞 渡辺はま子・霧島昇・歌(1940)
『東京ブギウギ』 鈴木勝・詞 笠置シヅ子・歌(1947)
『青い山脈』 西条八十・詞 藤山一郎・奈良光枝・歌(1949)
『銀座カンカン娘』 佐伯孝夫・詞 高峰秀子・歌(1949)
ほか多数。
笠置シズ子(1914-1985)は香川県で誕生し,大阪市で育った歌手・女優で,戦後「ブギの女王」として一世を風靡しました。
OSK日本歌劇団の前身で活躍,服部良一と出会ってから,一躍,全国区となりました。
私生活では,8歳年下の吉本穎右(吉本興業の創業者・吉本せいの子)と知合い,交際・妊娠に至るもせいは断固認めず,私生児を生み,穎右は24歳で病没,生涯独身を通しました。
最初,三笠静子を名乗っていましたが,崇仁親王が三笠宮を名乗ることになったので,恐れ多いと笠置シズ子と改名しました。
美空ひばりが登場するまで(最初ひばりは笠置の物真似をしていました)歌って踊れるスーパースターとして芸能界に君臨しました。
晩年,「家族そろって歌合戦」(1966-1980)では審査員をつとめ,大阪の優しいおばちゃんの感じが前面に出ていました。
この『買物ブギ』は大阪弁の独特な抑揚と音楽がピッタリと融合して,リズミカルな歌唱とあいまって,これほど大阪弁を上手に扱った曲は他に見当たりません。
つぎは年齢のことです。
日本では人に年齢を気軽に尋ねたりしますね。
新聞でもかならずカッコつきでその人の年齢が表記されています。
「長幼の序」(年長者と年少者との間にある秩序)を明確にして,適切な対応をするため,ですか?
それは違うでしょう。
むしろ,今の日本は若者に迎合する社会ではないか,と思っています。
この世の中,若者向きが多すぎる,と感じています。
私の経験ですが
ある高級(とされている)ホテルのメインダイニングで食事をしていたときのこと,係員がお客と一緒に騒いでいるので,責任者を呼び注意を喚起したことろ,「私どもはお客様と一緒にワッと盛り上げる方向でやっています」のような珍(?)回答だったので,ここは大人がゆっくり楽しむ場所ではないと判断して,それ以降いっさい行きません。
それに最近の流行といってもよいような,歳の差婚があります。
1.48差 鈴木清順(88) 一般女性(40)
2.45差 加藤茶 (68) 綾菜(23)
3.40差 角川春樹(69) 友美(29)
4.38差 上原謙 (65) 雅美(27)
5.33差 中村富十郎(66) 正恵(33)
6.32差 ラサール石井(56)桃圭(24)
7.30差 山本文郎(73) 由美子(43)
ここまで来るとご立派(!)としか言いようがありませんが,必ずしもお金が目当てとも思えませんが。
むかし林髞(はやしたかし,1897-1969)という医師で作家の人がいて,「人生2度結婚説」というものを提唱しました。
若い男性/女性はまず熟年女性/男性と結婚,自分が熟年になり伴侶が他界すると,今度は若い女性/男性と結婚という考え方で,こうすれば世の中,少なくとも庶民の暮らす世の中に経済力や思慮分別が万遍なく行き渡るのではないか,ということのようです。
もちろん制度化するのは難しいですが,自由な社会ですから,個人的に実現するのは差し支えないものと思われます。
そんなことより
日本は国際的に最悪の女性差別国家であると思われていることをご存知ですか?
労働している男女間の給与格差が大きく,40歳以上では40%以上になり,ほとんど世界最悪なのです。
上場企業で役員になる女性の割合は,わずか5%と極めて低いのです。
同じように大学を出ても,男女間で給料でも出世でも大きな差別がされている,というのが日本の実態なのです。
表面的には一見,女性が優位に扱われているように見える日本の社会ですが,根本のところで,大きな差別が厳然として存在するのです。
それを自覚して打破するのは,結局,女性自身です。