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お茶はなに色

5月2日は立春(2月3日)から数えて88日目,いわゆる八十八夜で,この日に摘んだ茶は上等なものとされ,この日にお茶を飲むと長生きするともいわれています。

茶摘」文部省唱歌(作詞・作曲は不詳)

夏も近づく 八十八夜
野にも山にも 若葉が茂る
あれに見えるは 茶摘みじゃないか
あかねだすきに 菅(すげ)の笠

日和(ひより)つづきの 今日此頃を
心のどかに 摘みつつ歌う
摘めよ摘め摘め 摘まねばならぬ
摘まにゃ日本の 茶にならぬ

この歌はつぎのYouTubeで聴けます。


ところで
お茶はなに色?
と問われると,ふつう「緑色」と答えますよね。
日本人ならお茶は「茶色」とは言いません。
なぜでしょう?

お茶の歴史は
最澄(767-822)や空海(774-835)らが留学中の唐から茶を持ち帰りましたが,薬用や儀式に用いられるだけで普及はしませんでした。
臨済宗の開祖・栄西(1141-1215)は 宋から抹茶系の製茶法,抹茶式のお茶のたて方を初めてわが国へもたらしました。

そして
緑茶(日本茶)は もともとは中国茶のように「茶色」でしたが 摘み取った茶葉を加熱処理して発酵を妨げ,「緑色」をとどめました。
おかげで
カテキン(渋み成分)血中コレステロールの低下,抗酸化作用
カフェイン(苦み成分)覚醒作用
テアニン(旨み成分)リラックス効果
その他,ビタミン類・サポニンなど多彩です。

風薫る5月,新茶でなくても,緑茶の効用を再確認して,おいしく飲みましょう。

コイの季節

恋の季節は「わっすれられないのー」ですが,鯉の季節は「こどもの日」です。
いくつもあるなかで,いちばん勇壮なのは
「鯉のぼり」作詞は不詳 作曲:弘田龍太郎(文部省唱歌)

甍(いらか)の波と 雲の波
重なる波の 中空を
橘(たちばな)かおる 朝風に
高く泳ぐや 鯉のぼり

開ける広き 其の口に
舟をも吞(の)まん 様見えて
ゆたかに振う 尾鰭(おひれ)には
物に動ぜぬ 姿あり

つぎのYouTubeで聴けます。

つぎのコイの季節は
広島東洋カープはいったいどうしたんですか
今年は強すぎですね!
現在(5月1日時点)でセ・リーグの堂々トップです。
なにしろ前健を筆頭に先発投手陣が素晴らしいところに,4番のエルドレッドという外人が打率もホームランもすごい。
例年,開幕後に好調でも,なぜか5月以降急に低迷し,「鯉のぼり」をしまい込むと「カープの季節」は終了,などと散々に言われていました。
このまま突っ走るのでしょうか?

でも
2位の阪神タイガースも良いんじゃないですか。
投手陣は明らかに広島より数段落ちますが,打撃はそれ以上ですよ。
その中心が新4番ゴメス。
開幕前までは,オープン戦に全く良いところがなくて,「打てなくて,ゴメんス」」という自虐派の虎ファンがダジャレを言うはずの予測を,良い方に裏切ってくれました。

ところが
お金をかけて補強しているはずの東の方のチームはなかなか浮上せず

江戸っ子は
皐月(さつき)の鯉の吹流し
口先ばかりで
腸(はらわた)は無し

という狂歌のように,老害代表の爺さんがいくら吠えてみても,このざまではねェ。

五月は新緑のよい季節です。
紫外線には気を付けて,屋外でスポーツを楽しみましょう。

永井一郎さんの思い出

声優・俳優・ナレータの永井一郎さん(1931.5.10-2014.1.27)が亡くなりました。
享年82歳の突然死でした。
各メディアはアニメ「サザエさん」の磯野波平の声を40年以上と 伝えましたが,私には別の感慨があります。

最近では
NHK広島局統括の「百歳バンザイ」(2002-2011)の 語り役があります。
100歳以上の元気な高齢者を紹介する10分のドキュメンタリ番組 ですが,PUFFYの「これが私の生きる道」のテーマ曲とともに,ご本人もライフワーク(終生の仕事)として, ご自身が百歳になってもやりたいとおっしゃっていました。

しかし
永井さんの声優としての原点は, なんといっても「ローハイド」(1959-1965)につきます。
テキサス州サンアントニオからミズーリ州セタニアまで3000頭の 牛を運ぶ壮大な西部劇です。

以下は(役職 役名 俳優 吹替え声優)
隊長 ギル・フェイバー エリック・フレミング 小林修
補佐役 ロディ・イエイツ クリント・イーストウッド 山田康雄
コック ウイッシュボーン ポール・ブラインガー 永井一郎

面白いドラマに共通するのが,役のキャラ(性格)が立っている
ということがあります。
元南軍の将校であったボスのフェイバーさんは逞しく頑固で男気
があって統率力にたけ,荒くれカウボーイ達も畏敬する存在。
優男で女に弱くちょっと頼りない軟派な補佐役のロディは 役柄とはいえ,今の硬派なイーストウッドを想像するのは困難。
いつも怒鳴りちらし,見習いのマッシーをボロクソに叱って ばかりいるが剽軽な髭の小男のコックのウイッシュボーンと, 役者がそろっていました。
個人的には,永井さんが高校の先輩ということで, 関心を持って見ていました。
この3人はそろって1962年2月21日に来日しています。

そして
主題歌をあのフランキー・レインが猛々しく吠えるように 歌います。
彼はこのほか
OK牧場の決斗」や「真昼の決闘」のハイヌーン でも有名ですね。
ブロークン(訛り)過ぎて何を言っているのか, ネイティブ(生粋の人)でもそうだったらしいのですが, 迫力と勇壮さは満点でした。

つぎのYouTubeでタイトルバック(題名の背景)に歌が流れます。

このテーマ曲を聴くと, 今でも「血わき肉躍る」状態になるんです。

このドラマは
永井さんの声優としての原点であると同時に, クリント・イーストウッドの俳優としての原点でもあるのです。
これはご両人ともに認めておられることです。

菜の花はうれしい

最初に菜の花が登場する歌です。

b_nanohana

 菜の花畠に 入日薄れ
 見わたす山の端(は) 霞ふかし
 春風そよふく 空を見れば
 夕月かかりて におい淡し

 里わの火影(ほかげ)も 森の色も
 田中の小路(こみち)を たどる人も
 蛙(かわず)のなくねも かねの音も
 さながら霞める 朧(おぼろ)月夜

菜の花の黄色は,心を癒します。
そしてこの歌も,一面の菜の花畠が広がっている その情景が目に浮かんできますね。
歌詞とメロディが融合して,春の黄昏(たそがれ) どきのゆったりとのどかな感じにあふれています。
日本人の好む懐かしい歌を調査すれば きっと上位にランキングされる曲でしょう。

朧月夜
作詞:高野辰之 (1876.4.13-1947.1.25)
作曲:岡野貞一 (1878.2.16-1941.12.29)

この歌は文部省唱歌として,作詞者・作曲者は 長く機密扱いになっていました。

文部省唱歌とは
明治から昭和にかけて 文部省が編纂した尋常小学校・高等小学校・国民学校 等の教科書に掲載された唱歌と楽曲の総称です。

この高野・岡野のゴールデンコンビは 次のような歌も作っています。

故郷」      1914.6   尋常小学唱歌(六)
朧月夜」    1914.6   尋常小学唱歌(六)
春が来た」  1910.7   尋常小学読本唱歌
春の小川」  1912.12 尋常小学唱歌(四)
紅葉」      1911.6   尋常小学唱歌(二)

いずれもみんながよく知っている とても懐かしい曲ばかりですね。

つぎのYouTubeでこの歌を聴くことができます。

菜の花には,次のような有名な句もあります。
 菜の花や 月は東に 日は西に 与謝蕪村(1716-1783)

菜の花は,おひたし・辛子和え,など食用にもなります。
また菜の花はアブラナ(油菜)とも呼ばれ 油をとるために栽培されてきました。
菜種とも言われますね。
菜種油は日本では食用の6割を占めます。

鑑賞用としても,食用としても,加工しても 菜の花は人間に大いに貢献してくれています。
だから自然に懐かしいと感じるのかもしれません。