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肉のはなし

毎月29日は「肉の日」だそうです。
語呂合せで,29をニクと読んで肉の日になったということです。

ご存知のように,といえば,西牛東豚が,もう常識になっていますね。
肉ジャガにもカレーライスにも,関西では当然牛肉なのに,関東では豚肉を使うそうです。

関西では551蓬莱の「豚まん」なのに,関東では井村屋の「肉まん」で,〇〇家の「牛どん」がでたときに,関西では「肉どん」というのに,と違和感を持ちました。

そういえば,最後の将軍・第15代徳川慶喜(1837-1913)は薩摩の豚肉が好みで,「豚一(ぶたいち)様」と呼ばれたそうです。「一」は一橋家の出の意味です。
この人,維新の志士たちや幕臣たちのほとんどが早逝しているのに,76歳,大正期まで生きてのびています。

ちなみに,徳川御三家とは尾張・紀州・水戸であり,8代将軍吉宗(紀州家の出)以降に御三卿すなわち,田安・一橋・清水ができました。
慶喜水戸藩主・徳川斉昭の子ですが,一橋家に養子に入り,将軍家を継承しました。

先日,TV番組で,夫が「今夜,肉が食べたい」と連絡すると,妻はどんな料理を出すか,というような他愛のないことをやっていました。

結果,豚肉のしょうが炒め,トリのから揚げ,トンカツなど,ほとんど牛肉料理以外で,1軒だけすき焼きで,その夫は大喜びしていました。
これは妻の確信犯的行動で,健康のため,経済のため,分っていて作ったようです。現代の妻たちも頭が良いですね。

ここで,牛肉豚肉鶏肉の特徴を比較してみましょうか。

牛肉タンパク質脂質,ビタミンB2を多く含んでいます。赤身には鉄や亜鉛,リンなどのミネラルが豊富です。タンパク質は筋肉や血液をつくったり,体内の組織を再生したりするはたらきを持っていますが,体内に摂り入れるだけではなかなかエネルギーに変わりません。そこで活躍するのがビタミンBとミネラルで,代謝を促し,効率良くエネルギーに変えてくれます。太りやすくなるのは動物性脂肪が体内で固まりやすいことが原因です。

豚肉ビタミンB群牛肉の約5倍も含まれています。特に多く含まれるビタミンB1は,脳や中枢神経の働きを活性化させるはたらきがあるため,集中力や記憶力を高め,イライラを抑える効果があります。必須アミノ酸をバランス良く含んでいることも大きな特徴です。そのほか血管を拡張するはたらきもあり,動脈硬化や高血圧の予防に効果的とされるコリンも多く含まれていたりと,何かと健康効果が期待できるのが豚肉です。

鶏肉脂肪が少なく,消化が良いことが利点です。脂肪分が皮の部分だけなので,皮を取り除けば,脂質やコレステロールを抑えられるため,肥満防止に効果があります。必須アミノ酸のひとつであるメチオニンも多く,肝機能の強化や肝臓に脂肪が溜まる脂肪肝の予防効果があります。ビタミンA,ビタミンB6,ナイアシンを多く含んでおり,眼精疲労の緩和,精神安定などの効果が期待されます。また,皮や骨まわりの部位はコラーゲンが豊富で,肌の新陳代謝を促進します。

相撲取りは牛肉豚肉は食べず,鶏肉を食べます。
それは四足は負けを意味するので,二足で立つ鶏を好むのです。

また,かつての陸上競技短距離の王者カール・ルイスは鶏肉しか食べないことで有名でしたが,それはダイエットのためだったようです。

欧米人は肉食中心で進化してきており,腸の長さは肉食動物並みの4mになってきています。大腸ガン潰瘍性大腸炎になりやすく,肉食大国アメリカでは大腸ガンは死亡率の第2位です。

日本人も戦後の欧米化によって肉食中心の生活になりましたが,もともとは野菜や穀類で進化してきたため,欧米人に比べ長めの腸(7m)ですので,日本人が肉食すると,腸が長い分だけ腐敗便を作りやすく,悪玉菌増殖の危険性,増加した動物性脂肪の影響などで大腸ガン潰瘍性大腸炎その他の成人病を引き起こす可能性は他の民族に比べて大きいことになります。

日本は農耕民族で穀物を主食とし,300年前まで玄米菜食でした。675年天武天皇により肉食禁止令が出されて以来,7世紀から19世紀(江戸末期)までの間,原則として肉食は禁止されていました。しかし体が温まるなど薬膳として,あるいは猟師などが密かに食べてはいました。

人間の歯は動物を取ってしとめるキバはなく,草食に適した臼歯があります。

人類が進化する過程で,肉食するようになって,脳細胞が飛躍的に増大して,絶大な思考力を得るようになったという説があります。
しかし,現在,肉食を増やしても,残念ながら脳が増大することはありません。

必要なたんぱく質を摂取するために,肉食は必要ですが,控えめにして,牛肉よりも豚肉や鶏肉を中心にする方が健康維持には良いでしょう。

さて,
寒い冬の歌はこの曲にしましょうか。

ペチカ北原白秋・詞 山田耕筰・曲(1925)「子供の村」

雪のふる夜は たのしいペチカ
ペチカ燃えろよ お話しましょ
むかしむかしよ 燃えろよペチカ

雪のふる夜は たのしいペチカ
ペチカ燃えろよ おもては寒い
栗や栗やと 呼びますペチカ

雪のふる夜は たのしいペチカ
ペチカ燃えろよ じき春来ます
いまにやなぎも 萌えましょペチカ

雪のふる夜は たのしいペチカ
ペチカ燃えろよ 誰だか来ます
お客さまでしょ うれしいペチカ

雪のふる夜は たのしいペチカ
ペチカ燃えろよ お話しましょ
火の粉ぱちぱち はねろよペチカ 

ペチカпечка,pechka)はロシアの暖炉調理装置です。
煙道がめぐらしてあるレンガなどで造った壁面の輻射熱で部屋を暖めます。

ここで,熱の伝わり方を簡単に説明しますと,伝導・対流・輻射の3つの移動方法があります。

熱伝導とは,物質の移動を伴わずに高温側から低温側へ熱が伝わる移動現象です。鍋の取っ手が熱くなるのは,その一例です。

熱対流とは,流体(液体,気体)内の加熱された部分は膨張し密度が小さくなって上昇し,そこへ周囲の低温の流体が流入して行われる熱移動です。鍋で湯を沸かすと,液体の熱移動が見られます。

熱輻射(ふくしゃ,放射)とは,高温の固体表面から低温の固体表面に,その間の気体の存在に関係なく,直接に電磁波の形で伝わる熱移動をいいます。太陽からの熱の伝わり方がその例です。

輻射型の暖房装置には,中国にかん),朝鮮はオンドル(温突)という伝統的な床暖房がありました。
これは台所のかまどで煮炊きしたときに発生する煙を居住空間の床下に通し,床を暖めることによって部屋全体をも暖める設備です。

日本でこのような本格的な暖房システムが普及しなかったのは,比較的温暖な気候のせいでしょう。

田舎ではいろり(囲炉裏)という調理・暖房器がありました。

温暖地ではせいぜい火鉢という局所暖房器でしょうか。
しかし,火鉢に入れた炭火五徳(ごとく)の上で鉄瓶がチンチンと鳴っている様には風情がありました。
また,五徳に金網をのせて,餅ないしオカキをじっくり焼きあげるのは,味わい深いものがありました。

春までもう少し,インフルエンザなどに罹らず,元気にお過ごしください。

年の始めの

年の始めのためしとて」は,唱歌「一月一日」の歌い出しで,「ためし」は「」で,決して「試し」ではありません。
年始の先例のように」というような意味です。

元旦(元日の朝)には,お屠蘇(とそ)を飲み,それぞれのお国柄の雑煮おせち料理をたべて,新年の祝儀をおこないます。

厚い新聞が届きますが,正月の新聞は読みごたえがないですね。

ほどなくとどく年賀状は,いっとき,虚礼廃止だとか,メールで済ます,などですたれた感がありましたが,年に一度の安否確認の意味もあって,なくならずに続いています。

正月が困るのは,スポーツジムも休館だし,テニスコートも開いてないし,初詣に出かけるにも混んでいるし,TV番組も似たようなものばかりで飽きるし,身体を持て余すことです。

唯一といっていいTVの楽しみは,オーストリアのウィーンから生でとどけられる,ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の「ニュー・イヤー・コンサート」でしょうか。
現在では世界の40ヵ国以上に生中継されています。
ちなみに,オーストリアと日本の時差は8時間,日本が進んでいます。

会場はウィーン楽友教会(Wiener Musikverein,ヴィーナー・ムジークフェライン)の大ホールで,ホール内部の絢爛豪華な装飾とともに,その音響の素晴らしさから通称「黄金のホール」と呼ばれています。

演奏会は,マチネ(昼間の興行)のため,演奏者は燕尾服やタキシードではなく,フロックコートかモーニング,略式でもズボンはグレーの縞物です。

演目はおもにワルツポルカです。
このウィンナ・ワルツと呼ばれるクイック・ワルツは独特で,3拍子が均等間隔ではなく,2拍目がひっかかり気味に演奏され,ウィーン生まれでなければこのリズム感がとれない,などと言われたりしています。

この伝統あるコンサートでは,アンコールとして,ヨハン・シュトラウスⅡの「美しく青きドナウ」,そして最後にヨハン・シュトラウスⅠの「ラデツキー行進曲」を演奏するのがならわしとなっています。

美しく青きドナウ」の冒頭が演奏されると一旦拍手が起こり演奏を中断,指揮者およびウィーン・フィルからの新年のあいさつがあり,再び最初から演奏を始めるのもならわしです。

新年の挨拶はその年の指揮者により色々な趣向で行なわれます。
たとえば,2002年のコンサートではウィーン・フィルの楽員に縁のある国の言葉で新年の挨拶を述べるという形で行なわれ,日本語のあいさつはコンサート・マスターが日本語で(妻が日本人),指揮者の小澤征爾が中国語(満洲生まれ)であいさつしました。

最後の最後の「ラデツキー行進曲」では,小太鼓が高らかに打ち鳴らされると,観客はもう待ってましたとノリノリで手拍子で参加します。

指揮者が誰になるのかも,注目ですが,今年2015年はズービンメータが5回目の登場でした。

ズービン・メータ(1936-)さんは,インドの出身,われわれの記憶に新しいのは,
2011年3月,フィレンツェ歌劇団を率いて来日しましたが,東日本大震災に遭遇,福島原発事故の影響を危惧するフィレンツェ市長の帰国命令によって日程半ばで中止となりました。
「日本の友人たちのために何も演奏できずに去るのは悲しい」と涙しました。
2011年4月10日,多くの外国人演奏家の来日キャンセルが続くなか,東京のオペラの森公演でベートーヴェンの「第九」(管弦楽はNHK交響楽団)を渾身の演奏し,観客は熱狂的に迎え,収益は全額寄付されるチャリティコンサートでした。

2002年の指揮者は小澤征爾(1935-)さんでした。
観客席には元モデルの妻,俳優の息子たちの顔が見えました。

観客といえば,以前,久米宏「ニュース・ステーション」で夜桜中継をしていた元銀行員の姿を何度も目にしました。

一度は生で見てみたい聴いてみたいという願望はありますが,なにせ,日本からの観劇ツアーがありますが,なんと,お一人様120万円(!)からの費用では,おいそれとは行けません。
ネットから自分で座席を確保できますから,ホテルも自分で予約して,格安航空券を利用すれば,何分の一かの費用で可能なはずです。

美しく青きドナウ」(An der schönen blauen Donau)は,1866年の普墺戦争(プロイセン王国とオーストリア帝国との戦争)で大敗し,失望の底に沈んだウィーン市民を慰めるために,ヨハン・シュトラウスⅡ(1825-1899)が1867年に最初,男声合唱曲として作曲しましたが,不評のため,管弦楽曲に書き直されて,人気が出ました。オーストリアの第2の国歌といわれています。

やはり年頭は,2012年ニューイヤーコンサートでのマリス・ヤンソンス指揮の「美しく青きドナウ」にしましょう。
ヤンソンス(1943-,ラトビア)は来年2016年の指揮者にも予定されています(3回目)。

実際の観劇では見られない(と思います)バレエがTVでは見られるのが良いところですね。
この2012年は特にバレエに趣向が凝らされており,上記の踊りの舞台もベルヴェデーレ宮殿ですが,そこの絵画館に所蔵されているクリムトの「接吻」のまえで,絵から抜け出たように踊るバレエ・シーンもありました。(バレエはウィーン国立バレエ団)

さて,
松の内」とは,正月の松飾がある間の称ですが,関西では昔ながらに15日までですが,関東では7日までと短縮されています。

また,
1月7日には,正月のごちそうに疲れ気味の胃を休めるために,春の七草を入れて炊いた七草粥(ななくさがゆ)を食べる習慣があります。
ところで春の七草は,つぎの和歌で覚えます。

せり・なずな ごぎょう・はこべら
ほとけのざ すずな・すずしろ
これぞ七草

ここに,
「なずな」はペンペン草
「ごぎょう」はハハコグザ
「はこべら」はハコベ
「ほとけのざ」はコオニタビラコ
「すずな」は蕪(かぶ)
「すずしろ」は大根

さらに,
1月8日は初薬師
1月10日は十日恵比寿(えべっさん)
1月14日は四天王寺どやどや
1月18日は初観音
1月21日は初弘法(初大師)
1月24日は初地蔵若草山山焼き
1月25日は初天神
1月28日は初不動

と「初」の付く行事がめじろ押し,1月は寒いのに,何かと心急き(こころぜき)な時節なのです。
風邪など引かないよう,元気にお過ごしください。

食通の時代?

食欲の秋」とは,秋は旬の食材が多く食欲が大いにそそられ,食べる楽しみこそが秋の醍醐味だ,というような言葉で,「味覚の秋」とも言います。 

フランス語のグルメ(gourmet)は「食通」の意味で,グルマン(gourmand)は「健啖家・大食漢」のことです。

最近,テレビでも自称「食通」の人たちが大勢登場して,何が美味しい,だとか,ここがお勧めとか,いささか,それこそ食傷気味です。

ミシュラン(Michelin)はフランスのタイヤ・メーカーで,世界で初めてラジアルタイヤを製品化し,2005年にブリヂストンに抜かれるまで世界最大のタイヤ・メーカーでした。

そのミシュランがタイヤの売り上げを伸ばすために,道路地図旅行ガイドブック(グリーン・ミシュラン)そしてレストラン・ホテルガイドブック(レッド・ミシュラン)をつくり,評価を星の数で格付けして,いまや世界で年間100万部を発行しています。

そのミシュランガイドも近年ヨーロッパでは影響力が低下してきて,新しい市場としてアメリカや日本で積極的に展開してきています。

現在,日本では,「東京・横浜・湘南」編と「関西」編の2種類が発行されています。

三ツ星レストランともなれば,1人で数万円は下らないので,庶民が気軽に行けるような店ではありません。

かたや日本は大阪が生んだ回転寿司は,安くて早くて,それこそ手軽に利用できる庶民の店です。

先日,昼食時にあるチェーン店に入りました。店は混んでいて,私の隣にお腹のせり出した中高年の男性があとから座りました。すると10分もしないうちに,勘定するではありませんか。見るとはなしに見ると,なんと既に11皿が積み上がっているではありませんか!
ちょっとちょっと!あまりに早食いで食い過ぎです!

早食いをすると,満腹中枢が刺激されて食欲にブレーキがかかる前に,食べ過ぎてしまいます。血糖値が急上昇し,インスリンが糖を脂肪に変えるため,それがカラダに蓄積し,肥満を加速させます。

やはり食事は頭でしなければなりません。
人体に必要な栄養源はすべて口から入ります。
バランスの良い食事をするのが健康の基本です。

つぎは食べ方の問題です。

ある日本人が英国に留学していて,親しいイギリス人と食事を共にしているとき,その人は食べやすいようにと,ステーキを先にナイフで刻んで,右手にフォークを持ち替えて食べていました。
すると友人のイギリス人は「そんなアメリカ人のような下品な食べ方はイギリスではやめた方が良い」と忠告してくれた,というのです。

そのイギリス人も一目置くのが,グルメの国フランスです。

そのフランス人たちと数か月間毎日一緒に昼食をする機会がありました
職場のレストランでの昼食とはいえ,かなりたくさんのバリエーションがあり,デザートまで注文できました。
フランス人たちは食事を楽しむんですね。
毎日同じ人と顔を合わせながら,なにをこんなに話すことがあるのだろうと思うくらい,よくしゃべります。
ところが,そんなにしゃべりながら,食事はドンドン片付いていくのです。
しかし,口から,食べ物が見えたりは決してしません。
いつ飲み込んでいるんだろうと不思議に思いました。
なにせ,食事だけに集中している私がいつも食べ遅れるのです。
フォークやナイフの使い方もみんな上手で,格好よかったですね。

一つはっきりしていることは,彼らは料理をかなり細かく切って小片にして口に入れます。だから,早く呑み込めるし,口の周りも汚れないし,第一,食べ方が上品に見えます。

TV番組を見ていても,みなさん切り方が大きいですね。
大きく口をあけてパクリと入れて,長いことモグモグと咀嚼していますね。
うどんやソバの影響で,パスタなど思わず音をたてて吸込んでしまうことがありますが,西洋では完璧なマナー違反です。

日本人なら,まずは箸の持ち方使い方でしょうか。
よくグルメ番組に出てくる中高年のタレントで,押し出しの良い人がいますが,箸の持ち方がへんで,コメントに説得力がなくなります。
日本人の基本的な教養として箸ぐらいはちゃんと使えるようにしましょう。

だいたいが,美味いものばかりを外食していると,健康に良くないことが多いです。
健康食を売り物にしている店を除いて,おいしいものを作るのに,それが身体に良いかどうかなど,考慮の外です。

TV番組などで,料理を評価するのに,「おいしい!」「やわらかい!」「ジューシー!」の三つが,語彙の貧弱なタレントの決まり文句のようです。

がいして,柔らかいものばかりを食べていると,余り噛まないので,唾液が十分に分泌されず,内臓の消化吸収に負担をかけ,また口内に雑菌が増えて虫歯歯肉炎になりやすくなります。

よく噛むことで,脳内に流れる血流量が増え,脳が刺激されます。

日本古来の,雑穀・いも類・根菜類・乾物などの硬い食材をしっかりとって,よく噛んで食事することが健康につながります。

これらこそが,ユネスコ無形文化遺産にも登録された「和食 日本人の伝統的な食文化」の原点です。

食欲の秋には,こんな楽しい歌はどうでしょうか。

おなかのへるうた阪田寛夫・作詞 大中恩・作曲(1964)

どうしておなかがへるのかな
けんかをするとへるのかな
なかよししててもへるもんな
かあちゃん かあちゃん
おなかとせなかがくっつくぞ

どうしておなかがへるのかな
おやつをたべないとへるのかな
いくらたべてもへるもんな
かあちゃん かあちゃん
おなかとせなかかくっつくぞ

阪田寛夫(1925-2005)さんは大阪市生まれの詩人・小説家・児童文学作家,元宝塚歌劇団の花組男役トップスターの大浦みずきは次女,大中恩は従兄弟です。東京帝国大学文学部卒。代表作は,小説『土の器』芥川賞,子供の歌『サッちゃん』など多数。

大中恩(1924-)さんは東京生まれの作曲家,父は『椰子の実』の作曲者の大中寅二です。東京音楽学校(現東京藝術大学)作曲科卒。代表作は「いぬのおまわりさん」「サッちゃん」など子供の歌,合唱曲など多数。

お腹の減ったときに食べる食事が一番おいしい料理となります。
そうすると,料理をおいしく頂くためには,適当な運動をするとその後の食事がおいしくなりますね。
だから「スポーツの秋」は「食欲の秋」につながります。

ただし,食間が空きすぎて,お腹が減りすぎると,身体の免疫力が低下すると言われていますから,あまり長時間空腹でいることは避けましょう。

バランスの良い旬の食材をつかった歯ごたえのある,塩分控えめの日本の伝統的な料理を控えめに取ることが健康に良いですね。

みなさんも良く考えて食欲の秋を満喫してください。

新聞を読んで

最近,新聞でこんな囲み記事がありました。少々長いですが,採録します。

ー 前略 -
あるショッピングセンターで,
ぼくはリンゴや卵などを買い求めてレジに並んだ。すぐ前に少し腰をかがめたおじいさんが立っている。80歳前後のお年か。両手に小さないなりずしが入ったパックを一つ持っている。夕食用なのだろうか。
何気なく目を向けていると,おじいさんは小銭をレジ台に一個一個並べて支払っている。つつましい年金生活者かな,とはこちらの勝手な想像ながら,消費税が10%になったら困るだろうな,と思ったりもした。
番がきてレジ前にいる間,今度は後ろのおじいさんに目がいった。やはり年のころは80前後だろうか,足を運ぶ動作にやや衰えが感じられた。手にしているのは,少々黒ずんだバナナひと房である。レジでは,やはり小さな財布から取り出した小銭を店員に渡している。
「レジ袋はいりますか?」「いりません」「2円お引きします」
そんなやり取りの後,おじいさんはバナナを両手に抱え込むようにして,ぼくの横をゆっくりと通り過ぎていった。
おじいさんはバナナが好きだからとか,おやつに買ったというのではなく,夕食や朝食のために買ったのではなかろうか。
ー 中略 -
たくさんの買物をしている人に文句などあろうはずはない。ないが,おじいさんのささやかな買物との対比からくる感情は,何か理不尽な格差社会を見る思いと絡んで胸の奥にわだかまった。
当然,その感情の向かう先は政治だ。しかし弱者より強者に傾きがちな政治家には,ぼくが目にしたおじいさんの姿など,目の端にも留まらないのではなかろうか。
ー 後略 -

これは毎日新聞2014年10月27日夕刊,客員編集委員・近藤勝重しあわせのトンボ」の一節です。

消費税の増税年金の減額後期高齢者の健康保険料の軽減措置の廃止など,老後の不安はますます募ります。

同じ紙面に,ミステリー作家の森村誠一・編著「迷子の日本国憲法」(徳間書店)を緊急出版したことへの取材記事があります。

森村さん(1933-)は,子供のころ戦争を体験されています。

戦争は生命だけでなく,国土や自然を破壊し,そのうえ基本的人権をことごとく奪います

戦争から学べば,軍事力や軍事同盟の強化は,平和を維持できないどころか,平和と自由と人権を破壊してしまうとわかるはずです

軍隊は国を守るという建前ながら,じっさいは国民を守りません。それは中国での関東軍しかり,沖縄の日本軍もそうでした。

自衛隊は憲法9条を背負う国民を守る用心棒です
自衛隊は,御嶽山噴火災害でも救助活動を担ったように,強制的な徴兵ではなく,自由意思にもとづく戦闘集団で,国民を守る使命感を持った用心棒,だと森村さんは言うのです。

政府が,「特定機密保護法」「国家安全保障会議」「集団的自衛権行使容認」の開戦に向かう3点セットを用意してしまいました。戦争に対する構えは,必ず戦争を誘発する,と警告しています。

だから今こそ,森村さんは声を大にして,人類の天敵である戦争に対して,「ノー!」を突き付けなければならない,と強調しています。

おじいさんと戦争のはなし,まったく違うように思うかもしれませんが,わたしたちにとって,どちらが切実で優先的な問題と捉えるのか,が問われています。

まったく話は変わりますが,
10月31日はハロウィーン(Halloween)と,いつのころからか言うようになりました。
もともとは秋の収穫を祝い,悪霊などを追い出す宗教的な意味合いのある行事でしたが,とくにアメリカで民間行事として定着しました。
カボチャの中身をくりぬいて「ジャック・オ・ランタン(Jack-o’-lantern)」を作って飾ったり,子供たちが魔女やお化けに仮装して近くの家々を訪れて,「トリック・オア・トリート(Trick or treat.   お菓子をくれないといたずらするぞ)」と唱えてお菓子をもらったりする風習があります。

ハロウィーンの語源は,カトリック教会で11月1日に祝われる「諸聖人の日(万聖節)」の前夜(イブ,eve)にあたることから,”All Hallows eve” から “Hallows eve” が訛って “Halloween” となったといわれています。

そのむかし,日本は神道と仏教の国なのに,クリスマスだのクリスマス・イブなどキリスト教の行事を祝うのはおかしい,との意見もありましたが,いつのまにか,宗教とは関係なく,一般的なお祭り日のようになりました。

しかし,ハロウィーンが定着するにはもう少し時間がかかることでしょうね。

さて今回は,この時期にふさわしい,まことに日本的なこの歌にしましょうか。

紅葉高野辰之・作詞 岡野貞一・作曲(1911)

秋の夕日に 照る山紅葉
濃いも薄いも 数ある中に
松をいろどる 楓や蔦は
山のふもとの 裾(すそ)模様

渓(たに)の流れに 散り浮く紅葉
波にゆられて 離れて寄って
赤や黄色の 色様々に
水の上にも 織る錦

この歌を聴くと,美しい秋の情景が目に浮かびますね。
ことしはキュッと寒くなりましたから,美しい紅葉が見られそうです。

美しく逞しき日本女性アスリートたち

頭の中で想像していたことと実際が違っていたということは多々あることです。

外国へ行く前になんとなく思っていたこと
1.外国の食事は問題なく食べられる
2.外国人(西欧人)はカッコいい

元来,偏食の方ではないので,なんでも食べられる,と思っていたのですが,やはり外国の食事は美味しくないのです。

長期に滞在していると,無性に日本食が食べたくなりました。
醤油味噌という最高の調味料があれば問題はないのですが。
和食がないところでは,中華で代用させることができます。
中国人は世界のあらゆるところに進出しているので助かります。

カナダ最大の都市トロントチャイナ・タウン(中華街)へ足を踏み入れると,ここはカナダか?と思います。
街の表示は漢字であふれ,音楽はテレサ・テンの歌う耳慣れた,中国語の歌でした。
現地の中国人たちが食べるレストランなので,値段も格安です。

フランスの首都パリの高級和食店では,入口を入ると,日本語で「いらっしゃいませ」と案内されます。
店内は黒い背広を着た日本人たちの日本語であふれています。
ビールはキリンビールがでます。
招待したフランス人は「ここはパリなのか?」と驚いておりました。

パリで,通勤に使う地域高速鉄道(RER)でも,パリ中心街のメトロ(地下鉄)でも,超高速列車TGVの車内でも,シャンゼリゼ通りを歩いても,職場でも,魅力的と思えるマドモアゼルには残念ながらお目にかかりませんでした。

カナダのスポーツジムでは,シャワールームで自然に目に入るのは,細い長い脚とたるんだお腹のカナダ人たちでした。
脚の長いことが必ずしも美的ではないのですね。

やっぱりカッコのいい西欧人というのは映画の中だけの虚構だったのだ,と気づきました。
日本でも,映画では美男・美女が目立ちますもんね。

さて,ここからが本題です。
女子の体操競技で
池田敬子(旧姓:田中,1933-)さんは,1954ローマの世界選手権で平均台金メダルを獲得(日本史上唯一),1964東京オリンピックで団体銅メダル,1966ドルトムントの世界選手権で段違い平行棒銀メダル個人総合銅メダル団体銅メダルと長期にわたり活躍し,日本女子体操の先駆者として,36歳までママさん選手として現役を続け,選手養成にも力をそそがれました。
その池田さんが「お尻の位置がもう一つ上にあったら」と外国選手との体型の違いを嘆いておられました。

女子フィギュアスケートの
伊藤みどり(1966-,145cm)さんは1992年アルベールビル・オリンピックの女子シングルで,世界初となるトリプル・アクセル(3回転半)を飛び,銀メダルを獲得しました。
技術点では最高点を取りましたが,芸術点では低い評価となりました。
技術は高いのに背が低かったり,スタイルが良くなかったりすると不利になるというのは,スポーツとしてはどうかと思います。

いつも思うことですが,スポーツ競技で採点によって結果の出る種目は,審判員の主観に必ず左右されるし,ときには不正が起きやすいので,納得のいかないことも少なくないのです。

しかし,その後の女子フィギュアスケート界はすごいですね。

まず,
荒川静香(1981-,166cm)さんは,2004ドルトムント世界選手権で金メダル,そして2006トリノ・オリンピックでは念願の金メダルを獲得しました。
時の首相は,すぐに祝福の国際電話を掛け,その後フリー演技に使ったプッチーニのオペラ「ツゥーランドット」を席を並べて鑑賞するという,職権乱用,越権行為もしくはパワハラを行い,ヒンシュクを買いました。

つぎに,
安藤美姫(1987-,162cm)さんは,2007東京,2011モスクワの両世界選手権で金メダルを取りました。
天才的なところがあり,反面,気まぐれなところもあって伸び悩みましたが,若いころ,公式戦で4回転を成功させています。

そして,
浅田真央(1990,163cm)さんは,2008ヨーテボリ,2010トリノ,2014さいたまの3回の世界選手権で金メダルを獲得し,2010バンクーバー・オリンピックでは惜しくも銀メダルとなりました。
2014ソチではショートプログラムで大失敗をし,フリーで完璧な演技をして,メダルには届きませんでしたが,感動させました。

荒川・安藤・浅田さんらは,各国の選手と比べても,優るとも劣らない,美しい容姿の持ち主です。

いっぽう,外国の選手を見ても,
クリスティ・ヤマグチ(日系アメリカ人,1971-)は,1992アルベールビル・オリンピックで金メダル,1991ミュンヘン,1992オークランドの両世界選手権で金メダルを取っています。

ミッシェル・クワン(中国系アメリカ人,1980-)は,1996エドモントン,1998ミネアポリス,2000ニース,2001バンクーバ,2003ワシントンDCの5回の世界選手権で金メダルを取りながら,オリンピックでは1998長野銀メダル,2002ソルトレーク銅メダルと結果が出ませんでした。

金妍児(キム・ヨナ,韓国,1990-)は2009ロサンゼルス,2013ロンドンの世界選手権で金メダル,五輪ではバンクーバー金メダルソチ銀メダルでした。
浅田と同年齢でジュニアの時代から競い合い,最終的に競い勝ったといえるのかもしれません。

男子でも
パトリック・チャン(中国系カナダ人,1990-)は2011モスクワ,2012ニース,2013ロンドンの3回の世界選手権で金メダルを取りましたが,2014ソチ五輪では銀メダルに終わりました。

もちろん
羽生結弦(はにゅう・ゆづる,1994-)が2014ソチ金メダルに輝いたのは記憶に新しいことです。

このように,日本を含む東アジアの人々が,このような結果を残しているということは,何か特別な理由があるのか,考察してみるのも面白いかもしれません。

ひとつには,東洋人特有の繊細さが生かされるスポーツなのかもしれません。
また,一つ一つの技術を時間をかけてコツコツ積み重ねて完成度を高めてゆく必要があるので,我慢強い忍耐力が求められ,それらの気質を民族的に有しているのかもしれません。

さて,女子体操やフィギュアスケートに共通する素養はなんでしょうか?

それはバレエです。
スイスのローザンヌ国際バレエコンクールは若手の登竜門として有名ですが,数々の日本人受賞者がいます。

1983 吉田都(1865-)スカラーシップ賞 ロイヤルバレエ団 元プリンシパル
1989 熊川哲也(1972-) 最優秀特別賞 ロイヤルバレエ団 元プリンシパル Kバレエ・カンパニー主宰
2000 鍛冶屋百合子(1984-) スカラーシップ賞 ヒューストン・バレエ団 ファースト・ソリスト
2001 倉永美沙(1987-) プロ研修賞 ボストン・バレエ団 プリンシパル
2012 菅井円加(1994-) プロ研修賞,コンテンポラリー賞1位 ドイツのナショナル・ユース・バレエ団
2014 二山治雄(1996-) スカラーシップ賞1位 サンフランシスコ・バレエ学校・留学予定

そのほか,今年2014年にはアメリカのジャクソン国際バレエコンクールのシニア部門で金賞の加瀬栞(1992-)や,ブルガリアのヴァルナ国際バレエコンクールのシニアとジュニア両部門でも日本人を母とするハーフの人たちが銀賞を取っています。

今後活躍が大いに期待される新進気鋭の菅井円加さんが2012年のローザンヌ国際バレエコンクールのコンテンポラリー部門でグランプリを取ったときの映像です。
現代のバレエはクラシックコンテンポラリ―に分かれており,今やヨーロッパのバレエでは自由な表現が許されるコンテンポラリーに重心が寄っています。

もちろん,バレエ・ダンサーアスリートではありませんが,バレエは身体全体を使った究極の踊りであり,いろいろな踊りやスポーツの原点となっています。

たとえば,
フィギュアスケートでは,スピードを出して滑ってきて,その勢いを利用して4回転しますが,
バレエでは,垂直に自力でジャンプして4回転して降りるダンサーがいくらでもいます。

いずれにせよ,
日本人女性が世界中で美しく,そして健気に活躍する姿を見たり,聞いたりするのは,とてもうれしいことです。

夏の花

夏はよる。
月の頃はさらなり,
やみもなほ,
ほたるの多く飛びちがひたる。
また,ただひとつふたつなど,
ほのかにうちひかりて行くもをかし。
雨など降るもをかし。

清少納言枕草子』の「〔一〕春はあけぼの…」につづく余りにも有名な一節です。

ここに何度もでてくる「をかし」は「趣がある,風情がある,風流だ」という意味です。

しかし,現代は,夜も熱帯夜(最低気温が25℃以上の夜)になって,過ごしよいわけでもありません。

ついでに
都心部ではヒートアイランド(heat island)と呼ばれる現象がおきています。
これは,地図上に各地の温度分布を等温線で示し,それを等高線のようにみなすと,都心部を頂点とするような島の形状を表す現象です。
原因は,都市化に伴う環境の変化ですが
1.地表の被覆の人工物化(雨水が土壌に浸透しない)
2.人工排熱の増加(エアコン排熱など)
3.都市の高密度化
が主なものです。

この季節は,二十四節気のうちで「大暑」(7月23日~8月6日)と呼ばれて,文字通り,最も暑い期間です。
8月7日は「立秋」で暦の上では秋ですが,このあたりが一番暑くなる頃です。
しかし,手紙では,大暑のときは「暑中お見舞い」で,立秋になれば「残暑お見舞い」になりますので,その区別はお間違いのないように願います。

ところで
夏の花の代表はやっぱり向日葵(ひまわり)でしょうか。
茎に剛毛を生じ,高さは2mに達し,直径20cmもの大型の黄色い花を開きます。

ひまわりの種はペットの食用として用いられていますが,もちろん人間が食しても,有用な食糧です。
ヒマワリの種のもつ不飽和脂肪酸には,血中のコレステロールを減らす作用があり,血管を浄化して血行を良くします。
また一緒に含まれるビタミンEにも同様の効果があるため,しなやかな血管を保つにはおすすめの食材といえるでしょう。
生活習慣病の予防にも効果的です。

ひまわりといえば,この映画を思い出します。
映画『ひまわり』(イタリア,1970年9月日本公開)
ヴィットリオ・デ・シーカ・監督
ヘンリー・マンシーニ・音楽
第2次大戦中,洋裁師のジョバンナ(ソフィア・ローレン)と兵士アントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)は海岸で知合い,愛し合い,すぐに結婚。しかし,戦場に行きたくないアントニオは仮病を装うが,すぐにバレて,過酷なソ連戦線に追いやられます。アントニオは極寒の地で倒れますが,少女マーシャ(リュドミラ・サベーリエワ)に助けられます。
待ち続けるジョバンナは,戦後,ソ連戦線からの帰還兵に彼の消息を尋ねます。わずかな手がかりを頼りにソ連に向かうジョバンナ。ようやく探し当てますが,そこに暮らすマーシャと幼な子に会い,事情を察します。仕事から帰るアントニオの姿を見て,逃げるように立ち去り列車に飛び乗り号泣するジョバンナ。

美しい映像と美しい音楽,みごとな反戦映画です。
印象的なのは,一面のひまわり畑とともに,一面のヘルメットが並んでいる墓地の光景です。
ひまわりの数と同じほどの人々がこの戦争で亡くなったことを象徴的に表しています。

この映画を見たときなぜか,この歌を思い出しました。
岸壁の母藤田まさと・詞 平川浪竜・曲 菊池章子・歌(1954)二葉百合子・歌(1972)
実在の母親が舞鶴で,出征した息子の帰りを待ち続けた話を歌にして長年にわたり流行しました。

イタリア人の妻は積極的に戦地まで探しに行き,日本人の母はただ岸壁で待ち続ける,その対比でした。

しかし,岸壁の母の息子さんは生存されており,実情を知りながら,日本には帰られませんでした。

いずれにせよ,
間違いなく戦争は悲惨なものであり,二度とやってはならないことだけは確かです。

気のつかない差別

カナダにいるとき,ある求人案内に目をとめました。

その内容は,結構重要な求人にも関わらず極めて簡単で,職種条件(バイリンガル)・年俸の3種でした。
バイリンガル(bilingual,2言語使用者)といっても,日本語と英語ではダメで,カナダでは当然,英・仏2か国語を指します。
ちなみに
勤務していた研究所の秘書さんは,私と話すときはきれいな英語でしたが,ホテルの予約をお願いするとき,フランス語で話していて,彼女の母語がフランス語であることが分りました。

そこで
北米(アメリカ,カナダ)では,求人のときに,「性別」と「年齢」を明記することが禁じられていることを知りました。

性差別(gender discrimination)表現の禁止は,日本でも
看護婦→看護師,助産婦→助産師
と呼び替えたりしていますが,英語ではもっと神経を使います。

もちろん女性のみに使うウエイトレス(wait-ress)やスチワーデス(steward-ess)はwait-person,flight attendantと言い替えるし,未婚・既婚を表すミス(Miss)ミセス(Mrs.)はミズ(Ms)に統一しています。

日本では,差別用語として,めくら,つんぼ,おし,とかの身体障害者に対する昔からの言葉を使うことが禁止されています。
ですから
めくら滅法」(少しも見当を定めないさま)
つんぼ桟敷」(いろいろな事情を知らされない状態)
片手おち」(配慮が一方だけにかたよること)
は使ってはいけないことになっています。

戦後のリズム感あふれる快歌『買物ブギ』(村雨まさを・詞 服部良一・曲 笠置シヅ子・歌 1950)の最後で
わてツンボで聞こえまへん
これまたメクラで読めません
が放送で流れるとき,かならず音がありません。
つぎのYouTubeではハッキリ,明瞭に発音しています。

はたして,言葉を言い替えたら,差別意識はなくなるのでしょうか?

服部良一(1907-1993)は大阪市出身の作曲家,和製ポップスの創始者といってもよい存在。
なお,「村雨まさを」は服部良一のペンネームです。
代表作は,『買物ブギ』のほか
別れのブルース』 藤浦洸・詞 淡谷のり子・歌(1937)
蘇州夜曲』 西条八十・詞 渡辺はま子・霧島昇・歌(1940)
東京ブギウギ』 鈴木勝・詞 笠置シヅ子・歌(1947)
青い山脈』 西条八十・詞 藤山一郎・奈良光枝・歌(1949)
銀座カンカン娘』 佐伯孝夫・詞 高峰秀子・歌(1949)
ほか多数。

笠置シズ子(1914-1985)は香川県で誕生し,大阪市で育った歌手・女優で,戦後「ブギの女王」として一世を風靡しました。
OSK日本歌劇団の前身で活躍,服部良一と出会ってから,一躍,全国区となりました。
私生活では,8歳年下の吉本穎右(吉本興業の創業者・吉本せいの子)と知合い,交際・妊娠に至るもせいは断固認めず,私生児を生み,穎右は24歳で病没,生涯独身を通しました。
最初,三笠静子を名乗っていましたが,崇仁親王三笠宮を名乗ることになったので,恐れ多いと笠置シズ子と改名しました。
美空ひばりが登場するまで(最初ひばり笠置の物真似をしていました)歌って踊れるスーパースターとして芸能界に君臨しました。
晩年,「家族そろって歌合戦」(1966-1980)では審査員をつとめ,大阪の優しいおばちゃんの感じが前面に出ていました。

この『買物ブギ』は大阪弁の独特な抑揚と音楽がピッタリと融合して,リズミカルな歌唱とあいまって,これほど大阪弁を上手に扱った曲は他に見当たりません。

つぎは年齢のことです。
日本では人に年齢を気軽に尋ねたりしますね。
新聞でもかならずカッコつきでその人の年齢が表記されています。
長幼の序」(年長者と年少者との間にある秩序)を明確にして,適切な対応をするため,ですか?
それは違うでしょう。

むしろ,今の日本は若者に迎合する社会ではないか,と思っています。
この世の中,若者向きが多すぎる,と感じています。

私の経験ですが
ある高級(とされている)ホテルのメインダイニングで食事をしていたときのこと,係員がお客と一緒に騒いでいるので,責任者を呼び注意を喚起したことろ,「私どもはお客様と一緒にワッと盛り上げる方向でやっています」のような珍(?)回答だったので,ここは大人がゆっくり楽しむ場所ではないと判断して,それ以降いっさい行きません。

それに最近の流行といってもよいような,歳の差婚があります。

1.48差 鈴木清順(88)  一般女性(40)
2.45差 加藤茶 (68)  綾菜(23)
3.40差 角川春樹(69)  友美(29)
4.38差 上原謙 (65)  雅美(27)
5.33差 中村富十郎(66) 正恵(33)
6.32差 ラサール石井(56)桃圭(24)
7.30差 山本文郎(73)  由美子(43)

ここまで来るとご立派(!)としか言いようがありませんが,必ずしもお金が目当てとも思えませんが。

むかし林髞(はやしたかし,1897-1969)という医師で作家の人がいて,「人生2度結婚説」というものを提唱しました。
若い男性/女性はまず熟年女性/男性と結婚,自分が熟年になり伴侶が他界すると,今度は若い女性/男性と結婚という考え方で,こうすれば世の中,少なくとも庶民の暮らす世の中に経済力や思慮分別が万遍なく行き渡るのではないか,ということのようです。

もちろん制度化するのは難しいですが,自由な社会ですから,個人的に実現するのは差し支えないものと思われます。

そんなことより
日本は国際的に最悪の女性差別国家であると思われていることをご存知ですか?

労働している男女間の給与格差が大きく,40歳以上では40%以上になり,ほとんど世界最悪なのです。
上場企業で役員になる女性の割合は,わずか5%と極めて低いのです。
同じように大学を出ても,男女間で給料でも出世でも大きな差別がされている,というのが日本の実態なのです。

表面的には一見,女性が優位に扱われているように見える日本の社会ですが,根本のところで,大きな差別が厳然として存在するのです。

それを自覚して打破するのは,結局,女性自身です。

健康に過ごすということ

いきなりですが
日本の2013年の死因順位
1.悪性新生物(がん)365,000 人(昨年より4,000人増)
2.心疾患      197,000 人(昨年より1,000人増)
3.肺炎       124,000 人(昨年より1,000人増)
4.脳血管疾患    119,000 人(昨年より2,000人減)

ちなみに,1980年では
1.脳血管疾患    162,317人
2.悪性新生物(がん)161,764人
3.心疾患      123,505人

つまり,「がん」で亡くなる人が2倍以上,大幅に増えています。
現代は,2人に1人が「がん」にかかると言われますが,近年の医療技術の発展で,早期発見でのがん治療の場合は,その後の生存率が大きく改善し,治る病気となりつつあります。

脳血管疾患とは,脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血の総称ですが,減少してきているのはうれしいことです。

また
日本人の2012年の平均寿命は    1989年では
女性 86.41歳(世界1位)       81.77歳
男性 79.94歳(世界5位)       75.91歳

さらに
100歳以上の人数は(2013年)    1989年では
女性 47,606人            2,448人
男性    6,791人                630人
*計 54,397人            3,078人

この24年間で男性は10倍ですが,女性は20倍という恐ろしいほどの伸び率です。

最高齢者は女性が,大阪市住吉区の大川ミサヲ(115)さんで
男性は,さいたま市中央区の百井盛(110)さんです。

そして
誰もが願うことは,健康で長生きすることですね。
人のお世話にならないと生活ができないというのは苦痛なことです。

さいきん
糖尿病の人が,インスリン注射後に食事を取らなかったため,低血糖症状になり,意識が混濁した中で車を運転し,多くのケガ人をだすという事故がありました。

糖尿病は生活習慣病の一つですから,注意して生活すればかからなくて済む病気です。

生活習慣病とは
食習慣,運動習慣,休養,喫煙,飲酒等の生活習慣が,その発症・進行に関与する疾患群のことです。

スウェーデンにおける長年の追跡調査によれば,
生活習慣による死亡リスク
1.喫煙          1.92倍
2.糖尿病         1.64倍
3.高血圧         1.55倍
4.メタボリック症候群   1.36倍
5.高コレステロール血症  1.10倍

これらはそんなに難しいことではなくて,喫煙をやめて
適正な運動とバランスの良い食事をすることでほとんどが改善されます。

ちなみに
チンパンジーバナナはつきものですが,最近,動物園ではバナナをやらないようにしたそうです。
それは,市販のバナナは人間用に甘く作りすぎているので,チンパンジーには害になるそうです。
チンパンジー用には野生の青臭いものが良いのです。

そのように
いまや人間の生活では不自然に甘いものであふれています。
甘くないスイーツといっても自然の甘さを超えているのは明らかです。

よく
好きに生活させてくれ,健康のために我慢するなんて,まっぴら,好きなものを気にせずに食べたいだけ食べて,自由に生きたい,そのために短命でも良い,という人がいます。

まあ
そんな人にはどうぞご自由に,とは言いますが,しかし,少し気を付けるだけで,ずいぶん違ってきて,健康保険を使う確率を下げて,健全な社会となるのですが・・・。

若いころから,健康には気をつけて来ました。
喫煙も飲酒もしませんし,甘いものは一切食べません。
運動習慣も,ずーと続けて来ました。
いろいろ趣味があるようですが,本当の趣味は健康でしょう
とか
健康のためには,死んでもいいと思っているでしょう
というような冗談か揶揄かわからないようなことを言われ続けて来ましたが,それこそ気にせずに健康に過ごしてきました。

やっぱり元気で長生きできることが一番です。
元気でいれば,好きなこと,楽しいこともたくさんできます。
キーワードは「食事」と「運動」ですよ。

気になる音楽と音楽家

ある開発途上国に赴任していたとき,口に合うレストランもない中,比較的まし,と聞いたイタリアン・レストランに友人と二人で行ったときのことです。

そこでギターの調べが聞こえてきたのですが,明らかに聞き覚えのある曲でした。

それはインスピレーションジプシーキングス演奏)という曲で時代劇「鬼平犯科帳」のエンド・ロールで江戸の四季の美しい映像がうつされるバックに流れる音楽でした。

思わず演奏するギター・デュオに片言のロシア語で「それは日本の音楽だ!」と言うと,
「ミヤガワ,ミヤガワ」と言って,つぎの曲を弾きだしました。

それは
恋のバカンス』岩谷時子・作詞 宮川泰・作曲 ザ・ピーナッツ・歌(1963)

ため息の出るような
あなたのくちづけに
甘い恋を夢みる 乙女ごころよ
金色に輝く 熱い砂の上で
裸で恋をしよう 人魚のように

陽にやけた ほほよせて
ささやいた 約束は
二人だけの 秘めごと
ためいきが 出ちゃう
ああ 恋のよろこびに
バラ色の月日よ
はじめて あなたを見た
恋のバカンス

あとで聞いたところによると,ロシアでかなり流行った歌だそうで,ロシア語の歌詞もありましたが,「裸で恋をしよう」などという過激(?)な言葉はありません。

じつは宮川さん,このわずか4か月後の春分の日にお亡くなりになったのです。

宮川泰(ひろし,1931.3.18-2006.3.21)さんは,大阪府富田林市で育たれ,大阪学芸大学(現・大阪教育大学)音楽科を中退,そのご和製ポップスの開拓者として活躍,ザ・ピーナッツを育てられたことでも有名です。
代表作は「ウナ・セラ・ディ東京」「銀色の道」「宇宙戦艦ヤマド」など多数の作曲をしました。

クレージーキャッツにピアニストとして入団を誘われたりするほどのお笑い好きで,楽しく音楽する人でした。

岩谷時子(1916.3.18-2013.10.25)さんは,幼少から兵庫県西宮市で育たれ,神戸女学院大学部英文科を卒業後,宝塚歌劇団出版部に就職され,雑誌「歌劇」の編集長として活躍,8歳年下の
越路吹雪(1924.2.18-1980.11.7)と知合い,越路が退団するときに一緒に退職し,以後越路の無給のマネージャーとなります。
生活費を稼ぐため作詞家・訳詞家となり,越路のすべての歌と多くの作詞をしました。
代表作は「夜明けのうた」「君といつまでも」「恋の季節」「愛の賛歌」など多数の作詞・訳詞をしました。

生涯独身で,作詞から想像するような艶やかさはなく,むしろ質素な感じのする人で,97歳の長寿をまっとうされました。

ザ・ピーナッツ(活動期間59-75)は名古屋出身の双子女性デュオ,姉エミさんが沢田研二と結婚することで解散,エミさんは2012.6.15に亡くなっています。

当時からそして今も彼女らを上回るような世界的に活躍する女性デュオは出ていません。
ピンク・レディー(活動期間76-81)は,ピーナッツを目指したようですが,志し半ばで解散,挫折しました。
そのご何度も再結成しましたが,やはりうまくいきません。
歌い続けることも大切なんですね。

つゆの季節

いよいよ梅雨入りですね。
夏至(6月21日ころ)の前後2週間づつが標準的な期間ですから,今年は少々早めでした。

梅雨になるとじめじめして湿度が高くなり,かびが発生したり,ものが腐りやすくなって食あたりの危険性が増し,洗濯物が乾きにくくなり,だいいち,気分的に嫌ですよね。

日本人は天日干しが好みで,冬でも洗濯物を外に干す習慣が普通ですが,逆にカナダでは,夏でも乾燥機で乾かします。

洗濯物に限らず,ふとんでも天日干しをしますね。
最近は天日に干すより,紫外線を当てダニを殺し,たたき出して吸込む方が効果的というふとん専用の掃除機も好評なようです。

洗濯物の乾燥には,乾燥機のほかに,ユニットバスなどで浴室を乾燥室にするもの,エアコンの除湿モードを利用して部屋干しで乾燥させるもの,などがあります。

梅雨の良いところはないのでしょうか?
いえいえ
農作物を育てるという大切な役目があります。
この時期に多くの降水がないとコメの収穫に大きく影響します。
冬の積雪も農業には大切な水源とされています。

私が2年間も生活した,ある開発途上国では,夏は50℃にもなろうかというのに,6月から9月の4か月間で一滴の降水もありませんでした。
水源は自国ではまったく確保できずに,中国の高山の雪解け水に頼っています。
乾燥したところでは気象が急変して,突然寒くなったりもします。
日較差(1日の最高と最低気温の差)は平気で20℃以上ありました。
まあ熱帯夜がなくて夜は涼しい,という良い点もありますが。
なしにろ湿度が低くくて夏でも静電気が発生します。
ウガイすべくガラスコップに水を注ごうとして,水栓をひねったとき静電気が発生して思わずコップを落として割ったことが何度かありました。
そういうところで生活すると,肌がガサガサになります。
日本女性の肌がいつまでも美しいのは,この湿潤した気候の影響もあると思います。

アメリカの,最近ではインドでも,大規模農業地域では,地下水をくみ上げて農業用水に利用しているのです。
降水という供給源がないと,枯渇するのは必至です。

むかし日本でも,工業用水として地下水を利用して地盤沈下を引き起こしたことは記憶に新しいことです。
取水規制により,地盤の隆起が起こりましが,これは元に戻っただけの話です。

日本では降水量が多いために,このような回復が容易でした。
しかし,降水量の少ない地域では,容易に砂漠化します。

大気汚染の影響で酸性雨が降り,森林が壊滅した地域が世界には多くあります。
しかし,わが国では降水量が多いため,それほどの被害は出ていません。

中国からの黄砂もPM2.5(Particulate Matterの略,直径2.5μm以下の超微粒子)も十分な降水があれば洗い落とされます。

ただし,降りはじめの雨には気を付けてください。
長く晴天が続いた後の雨には大気中の有害物質が多く含まれているため,かからない方が安全です。

充分な降雨が人間の生活には必要なことがお分かりになったでしょう。
そして日本がいかに住みよい国であるかということもお分かりでしょう。

さて
雨の歌です。

『雨』 北原白秋・作詞 弘田龍太郎・作曲

雨がふります 雨がふる
遊びにゆきたし 傘はなし
紅緒のかっこも 緒が切れた

雨がふります 雨がふる
いやでもお家で 遊びましょう
千代紙折りましょう たたみましょう

ここではマニアックに同じ雨でも
『雨』 八木重吉・作詞 多田武彦・作曲

雨のおとが きこえる
雨がふっていたのだ

あのおとのように そっと世のために
はたらいていよう

雨があがるように しずかに死んでいこう

多田武彦(1930.11-)さんは大阪市のお生まれ,京都大法学部卒後,富士銀行に入社,在学中,男声合唱団に所属し指揮者として活躍,就職後は,作曲家・清水脩氏に師事し,日曜作曲家としておもに男声合唱曲をたくさん作曲されました。
代表曲「柳川風俗詩」(北原白秋),「富士山」(草野心平),「雨」など,重厚な和声を大切にした「多田節」として,その筋では有名です。
この曲は組曲「雨」の最終Ⅵの曲で,
多田さん自身が「私の臨終における鎮魂曲」と言われています。